3メガバンクがくみ取る金融庁の厳しい意向 顧客本位が口だけの金融機関は淘汰される

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金融大淘汰の荒波が迫る(写真:©Ingram Image/amanaimages)

「業界にも問題意識を持ち、変わろうとしているところは多い」

金融庁が金融機関に大号令をかけているフィデューシャリー・デューティー(FD、顧客本位の業務運営)の取り組み。金融庁の森信親長官も最近は金融機関トップの意識が少しずつ変わってきたことを実感しているようだ。

FDは、金融商品の販売、助言、商品開発、資産管理、運用などを行うすべての金融機関に顧客第一の業務運営を促すもの。金融庁は今年3月末、手数料の明確化や重要な情報の分かりやすい提供など、7項目で構成した「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表した。金融庁によると、6月末までにこれを採択し、取り組み方針を公表したのは都市銀行等で49、地方銀行で101、金融商品取引業者等で236など、合計で466にのぼった。

従来の金融機関は顧客の利益よりも自己の利益を優先してきたと疑われる状況にあった。特に金融庁が目をつけるのが、複雑な投資信託や貯蓄性保険商品の販売だ。銀行や証券会社など販社に高い手数料が落ちたり、顧客に頻繁に売買させることで販売手数料を得たりする中短期投資型のハイリスク・ハイリターンタイプの金融商品が問題視されている。

そして森長官は今年4月、『日本の資産運用業界への期待』と題した講演で「顧客本位を口で言うだけで具体的な行動につなげられない金融機関が淘汰されていく市場メカニズムが有効に働くような環境を作っていく」と語っている。週刊東洋経済は7月31日発売号(8月5日号)で『金融大淘汰 10年後、その銀行はあるか』を特集。森長官のインタビューをはじめ、金融業界には喫緊の課題であるFDの取り組み、そして活発化する地銀再編の行方などにも迫った。

日本の家計金融資産は5割超が現金

日本では長らく「貯蓄から資産形成へ」と叫ばれてきたが、現在も家計の金融資産1800兆円(2016年末)のうち、現預金が5割強を占め、英米の10~20%台に比べ圧倒的に比率が高い。資産形成の際、中心的な金融資産となる投信の運用残高では、米国2000兆円に対し、日本は100兆円程度に過ぎない。

週刊東洋経済7月31日発売号(8月5日号)の特集は『金融大淘汰 10年後、その銀行はあるか』です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

このような状況に陥っているのは、銀行や証券会社が自己の利益を第一に前述のようなタイプの投信ばかりを売りまくり、欧米の資産形成で一般的なインデックス投信が積極的に売られていないためと金融庁は考えている。

インデックス投信は、株価指標や債券指標などの指数に連動するように運用するもので、低い信託報酬率が特徴。販売手数料がゼロというのも珍しくない。老後生活資金や子の教育資金などのために資産形成を行う際は、こうした投信を長期保有するのが欧米では一般的だ。FDの取り組みを進めれば、銀行や証券会社は、顧客の投資方針やリスク許容度などに応じて最善の金融商品を助言、提供し、その結果、インデックス投信を中心とした資産形成が日本でも広がるというのが当局の見立てだ。

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