「脱化石燃料車」への動きは世界中で一致
日産「新型リーフ」が背負うEV普及の使命

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怖くても、他社の参入が不可欠

初代リーフは2010年から展開し、累計販売は国内で8万台、グローバルでは27万台に及ぶ。現在、世界で最も乗られているEVだ*3。9月発表のニューモデルは、日産のEVの開発基礎である「電動化技術」とそれとは別軸の「自動運転技術」の二つの結晶を取り入れている。

冒頭のe-Pedalやバッテリーの進化による航続距離の延長は「電動化技術」によるもの。「自動運転技術」ではセレナやエクストレイルでも話題になった、「渋滞走行」「巡航走行」シーンにおいて、ドライバーに代わって、アクセル、ブレーキ、ステアリングを自動で制御を行う「高速道路 同一車線自動運転技術プロパイロット」も搭載。さらに、「プロパイロットパーキング」も新たに実装する。これは、ナビ画面上で指定した駐車位置に向けて、スイッチ一つで自動駐車を行うという最新機能だ。また、初代モデルでは不満の声もくすぶっていたデザインも一新し、外観からも先進的なイメージを感じられるスタイルになるという。

EVのインフラ面は整備されつつあり、新型リーフには最新技術も満載。これだけの条件がそろえば、発売と同時に爆発的な売り上げを期待したくもなるが、当事者は案外冷静だ。

新型リーフのモニター画面。さまざまな新技術が映し出されることになる

「現状のEVの年間販売台数は日産だけで1万〜1万5千台で、これを将来的には3〜4倍にしていきたいと考えています。ただ、もっと爆発的にEVを普及させるために必要なのは、世の中の多数のお客様がEVを『クルマの次の主流』として受け入れる風潮や意識の醸成であり、それには主要な自動車メーカーがこぞってEVに参入し、『EV』という舞台でお客様に価値あるクルマを提案し合う競争環境が不可欠です。折しも他社もEVへの本格参入を公式表明し、『日本でもEVの時代がいよいよ』という雰囲気への追い風は強まっていると感じます。他社と競合になるのは確かにリスクですし、怖い部分もあります。しかし競争の中で各メーカーが切磋琢磨し、各々が魅力的なEVを世の中に送り出し合うことで『EVが主流』という世論が拡大していくと考えています」(寺西氏)

1933年に創業し、今では世界と伍して戦う「技術の日産」だ。EVでは負けられないプライドもある。

「日産にはこれまでEVの開発・販売・アフターサービスを通じて蓄積してきた、大量の実車データやノウハウがあります。EVは、構造上は従来型エンジン搭載車より簡単とも言われ、新規参入は比較的容易と言われますが、『お客様を満足させる・感動させる』レベルの完成度・品質でのEV提供をお約束できるのは、リーフでの経験と実績のある日産だけであると自負しています。新規にEV参入してきた他社にはない『電気自動車の日産ならではの付加価値』で勝負していく所存です」(寺西氏)

国内のEV分野ではすでに地歩を固めている日産。新型リーフでその地位を揺るぎないものにし、EVの普及を引っ張っていけるか。9月の発表が待たれる。

*3 出典:日産自動車調べ

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