フリーゲージで「信号トラブル」も起きていた

新幹線だけでなく在来線にも問題があった

なぜ最終段階の3次車ではなく、2次車の段階で問題を見抜けなかったのか。この疑問に対し国交省の幹部は、「FGTの技術開発は高速域よりも在来線のほうが難しいと思われていた」と打ち明ける。

素人が考えれば、猛スピードで走る新幹線のほうが技術開発は難しいようにみえる。だが、FGTの世界では逆だった。スピードが遅い在来線での走行のほうが難しいのだという。

3次車の客室はほぼ営業仕様だ(記者撮影)

理由はいくつかある。代表的なものは在来線のカーブと分岐だ。新幹線は高速域での安定走行を実現するためにカーブを緩やかに設定している。一方で在来線は急カーブ区間も少なくない。そのうえ、他路線への分岐は新幹線よりも多い。

軌間の長さを変えるために複雑な機器を搭載しているFGTは、急カーブ区間や分岐器を通過する際にスピードを出しすぎると脱線する危険がある。その対策に技術陣は心血を注いできたのだ。

研究を重ねた結果、車両の機材を小型・軽量化するなどの取り組みを行うと同時に、レールにも改良を加えれば問題をクリアできることが判明した。在来線という難所を乗り越え、技術陣はFGTの実用化に自信を深めていたに違いない。

安全面での重大なトラブルも頻発

2次車での試験では信号の不具合が頻発していた(記者撮影)

もっとも、在来線の急カーブや分岐の問題は当初から想定されていたこと。トラブルに対する心構えは技術陣にあった。一方でFGTの在来線走行試験では、想定外のトラブルも起きていた。

「FGTが走行する際に信号システムの不具合が起きていた」――。走行試験を実施した鉄道建設・運輸施設整備支援機構の担当者が明かす。

トラブルは2008年から2009年にかけて日豊本線で行われた2次車での試験で起きていた。鉄道の代表的な信号システムに「軌道回路」という仕組みがある。2本の線路の間には人体に影響がない程度の微弱な電気が流れている。列車の走行時には車輪と車軸を通じて2本のレールが電気でつながる。これによって列車の位置が検知できる。つまり軌道回路は列車検知装置としての役割を果たしている。

列車検知装置によって列車が踏切に接近していることが検知されると、踏切警報器の警報灯が点滅し、警報音が鳴り、遮断機が下がる。逆に、軌道回路に不具合が生じれば、列車が接近しても踏切は作動しない。列車の接近に気づかず人や自動車が踏切を横断していたら大事故になりかねない。

さらに言うと、軌道回路の不具合は、線路上のどこを列車が走っているかわからないという危険極まりない事態を引き起こす。列車がいないと思って青信号が出され、列車同士が衝突するといったリスクもある。軌道回路の不具合とは安全の根幹にかかわる問題なのだ。

FGT走行時に軌道回路が機能しなかったのはなぜだろうか。原因はやはりFGTの構造上の問題だった。一般的な列車は車輪と車軸ががっちりとつながっているが、FGTは車軸の間を車輪が動く構造のため、車輪と車軸は別個だ。このため一般の列車と比べると電気が伝わりにくくなる。

鉄道・運輸機構は、電圧を高めて電気を伝わりやすくさせるという対策を講じた。ただ、電圧を高めすぎると雨の日に列車が走っていないのに踏切の遮断機が下りるという逆のトラブルが起きかねない。線路にたまった雨水がレールの電気を通してしまうためだ。つまり電圧を高めるという方法だけでは決定打に欠けた。

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