「夏休み10日間」への短縮は日本を衰退させる 静岡県吉田町の施策に唖然、呆然

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夏休みが減れば、子どもたちがいろいろな体験をする時間も減ります。自然に親しむ、セミにおしっこをかけられる、魚や動物と触れ合う、科学博物館でおもしろい実験をする、本物のロケットを見る……。そうした時間が減って、いつもの教室で教科書とノートで勉強するのです。

親子で触れ合う時間も減ります。楽しい家族旅行、田舎の祖父母と過ごす時間、従兄弟と遊ぶ時間、これらもみんな減ります。スポーツのクラブやチームに入っている子は練習に参加する機会が減りますし、合宿、試合、遠征などにも参加できないかもしれません。塾や習い事に行く時間も減ります。塾の夏季講習とか空手教室の夏季特訓も参加できないかもしれません。

やりたいことに没頭できた世代が活躍している

今、日本では、子どもの頃に自分のやりたいことに没頭することができたゆとり世代の人たちが、大活躍しています。スポーツでは浅田真央、入江陵介、香川真司、田中将大。また、音楽やバレエなどの国際コンクールでもゆとり世代の日本人たちが良い成績をあげています。ビジネスでもゆとり世代の若い起業家たちが続々と誕生しつつあります。学校の授業時間数が減り、土日が休みになり、宿題も減り、学校に拘束される時間が減ったことで、その分、学校以外の場所で自分のとがった才能を伸ばす時間が十分に持てたことが大きいのです。

スポーツや音楽では若い才能が早くから目立ちますが、もう少し経てば学問やその他の芸術の分野でもゆとり世代の大活躍が見られるはずです。反対に、学校が子どもたちを抱え込む時間が長くなれば、子ども各人が持つすばらしい才能を伸ばす事ができなくなります。平均的かつ歯車的な人ばかりが増えるでしょう。このような人は、きたるべきグローバル時代、そしてAIの時代においては活躍できないと言われているのに……。

そもそも、世間でよく言われる「授業の時間数を増やせば学力が上がる」という考え自体が勘違いです。これについては文部科学省も認めていて、公式サイトにも「OECDのPISA調査などでも明らかなとおり、国際的に授業時数が少ないフィンランドの子どもたちが高い水準の読解力等を有するなど学力の水準と授業時間には明確な因果関係があるとは言えない」と明記されています。

日本の授業は、ひとクラス最大40人の集団を相手に先生が1人で教える一斉授業です。子どもたちの学力にはかなりの開きがあり、特に算数・数学においては顕著です。先生はどの学力層に焦点を当てて授業をすればいいでしょうか? あまりレベルを上げてしまうと、ついてこれない子が増えます。あまり下げてしまうと進度が遅れて、教科書が終わらない事態になります。ですから、ほとんどの場合、中の下くらいに焦点を当てて進めます。ということは、よくわかっている子にはつまらない授業にならざるをえませんし、わからない子にはこれでもわからないのです。そういう子には個別指導が必要なのですが、これをしていると他の子たちを放っておくことになり、授業が成立しなくなります。ですから、大人数の一斉授業のまま授業時間数を増やしても、わからない子はわからないまま座っている時間が増えるだけなのです。

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