NHK渾身の「AIに聞いてみた」が炎上した必然 バズるワードへの傾倒がもたらす報道の歪み

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7月22日にNHKが放送した「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」が、さまざまな波紋を呼んでいる(撮影:尾形文繁)
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7月22日に放送されたNHKスペシャル「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」が、さまざまな波紋を呼んでいるのをご存知だろうか。

この番組、NHKのウェブページで番組概要を見ると「日本の閉塞した状況を打破する手がかりを求めて、NHKは『課題解決型AI(人工知能)」を開発した。パターン認識と呼ばれる手法で700万を超える日本の統計データをAIが解析した結果、驚きの結論が!それは『40代ひとり暮らしを減らせば日本がよくなる』といった奇想天外な提言の数々だった。それは何を意味するのか? 日本は本当に良くなるのか? マツコ・デラックスと有働由美子アナが、本音でAIと対決する」とある。

とてもAIと呼べる代物ではない

ところが全録レコーダーに残っていたこの番組を見ると、この番組で使われているアプリケーションは、とてもAIと呼べる代物ではなさそうなのだ。そもそもAI研究を行っている民間企業や研究機関を頼らず、NHKが独自に開発して統計情報をインプット。結果を導いているという。

本コラムは番組批判を目的としているわけではないので、具体的にこの番組内容について掘り下げて言及はしない。しかし、AIで何らかの社会的傾向や問題点を洗い出すのではなく、単に番組担当者が考えている社会問題に関して、統計学的にその根拠を示そうとしているだけに過ぎないようだ。すなわち、“AI”がバズワードだから、番組における制作者の主張を裏付ける証拠として「AIを使った」というお墨付きを“自ら開発したAI(を名乗る)プログラムで”与えようとしている自作自演にしか見えない。

それぞれの波紋を追うと、いずれも“AIという技術”に対する理解の浅さが理由のように思えるが、一方でAIというバズワードをマーケティングの道具として利用したい層と、そうした過度な期待を煽る手法に対して怒りを感じる層のせめぎ合いが背景としてある。

「AI」の技術的な限界点が学術的に明らかになってくる一方で、現状のAI実装を現実解として受けいれビジネスへと発展させようとするグループもある。企業もAI的な要素をビジネスにしたい思いもあり、そのマーケティング活動とビジネスへの発展を進めたいエンジニアグループが一体化して、AI分野に興味を持つマスコミのズレた認識や、過度な期待や興奮をもたらしているように感じる。

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