トランプ通商政策の迷走があまりに酷すぎる 2カ国間自由貿易交渉ができればいいが…

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このとき、トランプ大統領はいつもの好戦的な口調で、「私たちの国から数千の工場が盗み出されたが、これまで何も言えなかった米国人たちは今、ホワイトハウスを通じて声を上げられる」と高らかに宣言した。

ウィルバー・ロス商務長官もこのとき、2つの大統領令は「海外のパートナー国と米国間とのまったく新しい通商関係の始まり」を示すものだと付け加えた。まもなく完成する予定の報告書には、米国の貿易赤字の原因となっている「貿易上の虐待および非互恵的な慣習」について詳細に記されるだろうと述べた。

トランプ大統領が貿易上「敵視」しているのは

もっとも、貿易赤字は複雑な問題であり、必ずしも貿易相手国の不公平な慣習の結果ではないとの見解も示し、自身はより穏健的な考えであることを示唆した。

が、実際にはトランプ大統領は貿易についてはすでに一部態度を軟化させているほか、米国第一主義についても具体的な方策は示されていない。こうした中、最近トランプ大統領があいまいな姿勢を示し始めていることに対して、多くの専門家たちはある疑問を持っている。

それは、トランプ政権がその後の交渉で相手国から譲歩を得ることを目的に虚勢を張っているだけなのか、あるいは、政権内や顧問から反対意見が出ているにもかかわらず、トランプ大統領自身は保護貿易主義に進もうとしているのか、という疑問である。

現在、トランプ政権が貿易上で最も「敵視」しているのは、メキシコと中国である。こうした中、トランプ政権は7月17日、NAFTA見直しの目標を公表。米通商代表部(USTR)が、公表した17ページに及ぶ文書には、トランプ政権がNAFTAにおいて改訂したいと考えている項目が並んでいる。その中には、メキシコによる不正補助金の廃止や、一部の産業で働く人々の雇用にかかわる急激な輸入増を防ぐための有効な方策が含まれていた。

NAFTAの再交渉は、8月半ばに開始されることになっており、トランプ政権は2018年1月までに取り決めが改訂されることを求めている。また、この交渉では、20年前には注目されることのなかった、知的財産権やデジタル貿易も含んでいる。

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