JALとANA、熱帯びる「ベトナムの空」争奪戦 急成長「ビキニLCC」がJALとタッグを組んだ

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「FSCとLCCが組む流れは今後も加速するだろう」。日系航空会社幹部はそう語る。需要の大きい国際幹線はFSCが飛び、国内線や周辺国への乗り継ぎはLCCが担うという構図だ。実際日本でも、「JALやANA、外国航空会社で成田まで来て、その先の国内線は自分でLCCを手配して安く済ませる観光客は増えている」(同)という。

FSC側は、LCCで価格競争に陥っている路線を無理に運航したくない。一方でLCCとしては、自前で国際線を拡大するのには限界がある。互いに補完し合える関係になりつつあるのだ。

ベトナムはアジアで最も熱い航空市場

かつてJALと提携していたベトナム航空は、昨年出資を受けた全日本空輸(ANA)へと乗り換えた(記者撮影)

ベトナムの航空需要は近年急拡大している。IATA(国際航空運送協会)によれば、ベトナム発着の国際線や国内線を利用した乗客数は昨年28.3%増えた。この伸び率はアジア太平洋の国々の中で最も高い。

日本からの路線も、日本企業のベトナム進出などを受け増加傾向だ。昨年全日本空輸(ANA)は成田―ホーチミン線を、国営ベトナム航空が中部・福岡―ホーチミン両線を増便した。

LCCではバニラエアが昨年9月に成田―台北―ホーチミン線の運航を開始。今年9月にはベトナム航空傘下のジェットスターパシフィックが関西―ハノイ・ダナンの両線を就航する。

当然JALもこの成長を取り込んでいくつもりで、もともとベトナム航空と提携を結んでいた。しかし昨年、その戦略の軌道修正を迫られた。引き金はANAだった。

ANAホールディングスは昨年5月、ベトナム航空と業務・資本提携契約を締結。ベトナムの国営企業改革の一環で進められた株式売却にANAが応じ、ベトナム航空の株式約8.8%を約120億円で取得した。両社が冬期ダイヤからコードシェアやマイレージ提携などを始めたことに伴い、JALはベトナム航空との提携を解消したのだった。

残るベトナムの航空大手は、実質的にベトジェットしかなかった。今回の提携は必然だったといえる。

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