安倍首相、人事でダメなら「開き直り」解散か 「小池新党」はずしと「補選消滅」の思惑も

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こうした「負のスパイラル」から抜け出るためには「解散断行しかない」(自民長老)のは事実だ。首相側近の古屋圭司自民党選対委員長は「解散は遅れれば遅れるほど不利になる」という持論を繰り返す。確かに、解散を来年に持ち越せば任期満了(来年12月)が迫る中での「追い込まれ解散」となり、与党への逆風が加速する可能性も少なくない。

一方、支持率急落などで"安倍1強"が揺らいでいるのに、政権交代の受け皿となるはずの民進党も蓮舫代表の求心力低下で「解党論」が飛び出す窮状にある。さらに、年内に国会議員5人以上による「国民ファーストの会(小池新党)」の旗揚げを模索する小池知事周辺の動きも、秋口解散なら「候補者選びも含め、選挙準備は不可能」(自民選対)となる。「政権を問う衆院選」で民進党が共産党との共闘に踏み込めば、民進党内の保守派離脱は必至で、「結果的に国民の選択肢は自民党しかなくなる」(同)との読みも背景にある。

「岸田氏取り込み」が総裁3選のカギに

そこで問題となるのが首相の心象風景だ。これまでの政権運営から「安倍政治は強気一辺倒」(民進党若手)と見られがちだが、側近は「政権運営は極めて現実的で、無謀な冒険は好まない」と証言する。首相自身も折にふれ「私は本来、争いを好まない性格」と語っている。確かに、「追い詰められての野垂れ死により、果敢に打って出るのが武士(もののふ)の道」(自民長老)との声もあるが、自民党内は「首相が地道に経済再生に努力すれば、反安倍の動きは広がらない」(細田派幹部)とみる向きが多い。

ここにきて産経新聞社とFNNの実施した「次の首相」に関する世論調査では石破氏が首相を僅差で抑えてトップに躍り出たが、ポスト安倍での石破氏の存在は「派閥は弱小(19人)で、まだまだ"噛ませ犬"のレベル」(自民長老)との見方が多く、石破氏と並ぶポスト安倍候補の岸田文雄外相が「首相支持」を貫く限り、首相の「総裁3選」は揺るがないというのが"永田町の常識"だ。

首相が20日夜、岸田氏と二人だけで約2時間密談したのも、「岸田氏取り込み戦略」の一環とみられている。首相は岸田氏の処遇について「外相留任か党3役」を念頭に置き、岸田氏も「政権を支える立場に変わりはない」と語っており、昨年夏の人事での石破氏の「入閣拒否」のように反旗を翻す可能性はない。

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