ASEANとの経済連携協定を軸に東アジア共同体を構築せよ!

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わが国の経済連携協定(EPA)の進み具合

 我が国は、2007年8月時点で、合計15の国・地域に対応しています。以下が、その内容です。
●EPA等を6カ国と締結:シンガポール、メキシコ、マレーシア、フィリピン、チリ、タイ
●2カ国・1地域と大筋合意済み:ブルネイ、インドネシア、ASEAN
●5カ国・1地域と交渉中(交渉準備中):インド、ベトナム、豪州、スイス、韓国、GCC(湾岸協力会議:サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、バーレーン、カタール、オマーン)
●1カ国・2地域と検討中:東アジア全体/アジア太平洋、日中韓、南アフリカ

 現在、世界の自由貿易協定の数は、200程度。アメリカの発効・締結が19カ国、EUの発効・締結が22カ国です。数を比較してもほとんど意味はないですが、一つの目安として協定を見た場合、6カ国の締結というのは、やや少ないといえるでしょう。なお、一般的に自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)と呼ばれますが、わが国は、関税の撤廃以外に人の移動や投資保護なども含め、経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)と言っています。よく、「FTAとEPAは違うのか?」という質問を受けますが、外国のFTAは、人やお金の移動も対象としており、私は、「EPAとFTAは国際的には同じである」と答えています。


ASEANを中心に進むアジアの経済連携

 また、今回の合意が行われた経済閣僚会議では、「2013年までに東アジア域内における自由貿易網の完成を目指すこと」をASEAN10カ国と日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドの16カ国で確認しました。

 こうしたなか、ASEANはアジア諸国とFTAの締結を進めています。ASEANは、アジアの経済統合の中核になろうとしているのです。ASEANが進めている経済協定は以下のとおりです。
●中・ASEAN:2005年 物品協定発効、2007年1月 サービス協定合意2007年 投資協定合意目標
●韓・ASEAN:2007年6月 物品協定発効、2007年投資サービス協定合意目標
●豪NZ・ASEAN:交渉中、2008年5月合意目標
●印・ASEAN:交渉中、2007年合意目標
●日・ASEAN:2007年8月 大筋合意、2007年11月妥結目標

 こうした変遷を見ていくと、このままだとASEANが東アジア自由貿易網の中心になるといえそうです。そうはいってもわが国は、成長率が落ちたといえども、世界第2位の経済大国。アジアにおける経済的地位は、群を抜いています。日本政府ももっと経済連携協定について、人材と資金を集中し、国際的なイニシアティブを取るべきでしょう。

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