プロ野球交流戦「廃止論」が毎年浮上する事情 観客動員増でも「おいしくない」球団もある

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埼玉西武ライオンズも球場の所有は西武鉄道だが、年間を通じて運営権は球団にあり、飲食や広告看板収入は球団のもの。だから、観客が増えればソフトバンク、楽天と同様の恩恵がある。加えて、親会社にも鉄道運賃収入増の形で恩恵がある。

指定管理者となっている千葉ロッテマリーンズもソフトバンクや楽天、西武と同様の恩恵がある。ソフトバンク、西武、ロッテは交流戦の動員数が、リーグ戦のそれを上回っているので、交流戦の恩恵を受けている球団といっていいだろう。

が、同じ指定管理者でも、広島東洋カープの場合は若干事情が異なる。広島はシーズン開始前に、全試合分のチケットを売り出してしまう(広島民の不満「チケット争奪戦が激しすぎ!」)。この方法を取っているのは12球団でも広島と阪神タイガースだけで、あとの10球団は、ゲーム開催の1~2カ月前にならないと売り出さない。

昨今のカープ人気を反映し、今年は発売当日の3月1日に全ゲームの全指定席が完売になった。残るは自由席とビジター応援席のみ。チケットゲッターの跋扈(ばっこ)も目立ち、チケット取引サイトには最終戦までの大量のチケットが出品されている。

広島と横浜は観客動員が「高止まり」

このため、広島の場合は、売れるチケットがすでに球団の手元やプレイガイドにはない。そもそも球場の座席稼働率が常時9割を超えているので、もう伸びる余地がほとんどない。

どうやら広島の場合は転売市場で観戦目的の人の手にチケットが渡る確率も高いらしく、実際に入場する人数は常時高止まり状態。そのため、交流戦とリーグ戦で観客動員数に差が出ない。

実は、横浜DeNAベイスターズも徐々に広島と似た領域に近づきつつある。横浜の場合は、球団が直接球場を持っているわけではないが、球場運営会社は球団の100%子会社だ。球場から上がる飲食や広告看板の収益は、間接的に球団の懐を潤す。その意味でロッテや広島に近く、なおかつ対戦カードに関係なく座席稼働率が高止まりしているので、交流戦とリーグ戦の差が出にくい。

一方、球場をグループ会社や親会社が所有している阪神、オリックスの在阪2球団の場合は、観客動員数増の恩恵の一部は、親会社やグループ会社のものになってしまう。

甲子園球場は阪神電鉄の所有なので、観客動員数が増えると飲食や広告看板収益、そして鉄道の乗車賃収入が増える形で親会社を潤すが、球団への恩恵はチケットやグッズの収入増程度にとどまる。

オリックスも京セラドームはグループ会社の所有。したがって、球団への恩恵はチケットやグッズの収入増程度にとどまる。

中日ドラゴンズも、ナゴヤドームはグループ会社の所有だが、球団、グループ会社への恩恵がオリックスと同様なのかがよくわからない。ナゴヤドーム開催の中日戦のチケットの主催者欄をみると、球団と中日新聞の連名になっている。筆者にとって、中日は12球団一ナゾが多い球団で、球団と中日新聞の間で、チケットがどうやり取りされているのかの実態が定かではないのだ。

中日主催ゲームのチケットは球団のチケットサイトだけでなく、中日新聞の販売店でも買える。ということは、その分は中日新聞が球団から買い上げている可能性があるのだが、その枚数が全体のどのくらいあるのかがまずわからない。また、新聞の販促用に無料の招待券が相当数出ている可能性もある。そう考えると、観客動員数が有料販売分で伸びたのか、無料配布分の来場者で伸びたのかの内訳が見えてこないのだ。

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