TDK過去最大の買収、実に手堅い事業補完

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TDK過去最大の買収、実に手堅い事業補完

TDKがドイツ電子部品大手エプコス社の子会社化を発表した。買収に投じる2000億円は、同社にとって過去最大の規模となる。

会見で上釜健宏社長は「買収金額は手持ちキャッシュを全部吐き出す水準で、社運を懸けたものになる」と気を引き締めた。だが、今回の子会社化による事業統合は非常に手堅い。

エプコス社が得意とする事業分野は、ほとんどがTDKの苦手とするところ。ライバル・村田製作所の後塵を拝してきた携帯電話向けなどの高周波部品に加え、センサーや自動車向けのモジュールでエプコス社は世界トップクラス。地域的にTDKが弱い欧州や南米、インドで高いシェアを誇る。またTDKが日本・アジア市場で得意とする家電・パソコン向け汎用部品やインダクタ(電子部品のコイル)の事業領域で重複が少なく、理想的な“結婚”だ。

TDKは昨年来、産業機器向け電源最大手ラムダを完全子会社化し、HDD(ハードディスクドライブ)サスペンション世界1位のマグネコンプ社(タイ)を買収。さらに記録メディアの販売事業を売却するなど、矢継ぎ早に事業再編を断行してきた。そうした中で、エプコス社の買収は大きな区切りとなりそうだ。

日本の電子部品業界は世界市場の約5割を握り、自動車と並び国際競争力が高い領域。今回の買収で電子部品だけで見れば京セラ、村田を引き離す売り上げ規模になる。あとは相互補完で得た強みをどこまで生かせるかだ。

 

 

(野村明弘 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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