調剤大手アインと提携 セブン少額出資の狙い

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調剤大手アインと提携 セブン少額出資の狙い

いよいよセブン&アイホールディングスが、医薬品事業に乗り出す。調剤薬局首位のアインファーマシーズと資本・業務提携を発表。アインの第三者割当増資を引き受けて、約16億円で株式7・8%を取得する。

アインは今年1月に、イオン傘下のCFSコーポレーションとの経営統合が破談になったばかり。新たな提携先を模索する中、セブンとの提携は渡りに船だった。

全国356店の調剤薬局を展開するアインは、積極的なM&Aで拡大路線をひた走る。しかしドラッグストア事業は45店にとどまり、5期連続の部門営業赤字。早期の立て直しが急務となっていた。両社はショッピングセンター内へのドラッグストア出店に着手。さらに病院周辺の立地を中心に、調剤薬局とコンビニの共同店舗を出店する。

コンビニで医薬品販売

アインにとっては、セブン&アイの仕入れや購買、物流網のインフラを活用できるメリットは大きい。現在、イトーヨーカ堂は6割の店舗で医薬品を販売しているが、アイン出店を進めて全店での取り扱いを目指す。また、医薬品や化粧品でPB商品の共同開発にも取り組む計画だ。

一方で、セブンが見据えるのは来年4月に控える薬事法改正、つまり医薬品販売の規制緩和だ。

新資格の「登録販売者」に移行すると、薬剤師を置かなくても大衆薬を販売できる。おのずと異業種からの参入障壁は低くなる。ただし受験には1年以上の実務経験が必要で、コンビニにとって高いハードルに変わりがない。

それでもファミリーマートは医薬品販売を開始する。9月の直営2店を皮切りに、3年後には300店規模を目指す。薬剤師の下で社員の実務経験を積ませる力の入れようで「医薬品のニーズは非常に高い。ライバルと差別化を図る」(ファミマ)。

セブン&アイも「現段階ではコンビニでの医薬品販売は難しい。だが、可能性を念頭に置く必要はある」(村田紀敏社長)と意欲をのぞかせる。アインを選んだのも、そもそもは薬剤師や登録販売者の育成で、協力を求めるのが狙い。店頭販売を実現する“解決策”は、はたして見つかるのか--。少額出資の背景には、セブンの模索が見え隠れする。

(田邉佳介 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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