安倍首相は秘蔵っ子の稲田防衛相を斬れるか 「見え透いた芝居」は政権への不信を増幅

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稲田防衛相は隠蔽を了承していたのか。21日、報道陣に囲まれて登庁した(写真:共同)

稲田朋美防衛相が絶体絶命のピンチを迎えている。南スーダンでの自衛隊国連平和維持活動(PKO)に関する「日報隠蔽問題」に自らが関与していたとの疑惑が浮上したからだ。同問題を解明するための特別防衛監察は、命令した防衛相自身の疑惑で7月21日公表の予定がずれ込み、28日か31日となる見通しだ。

「トラブルメーカー」の稲田氏に対し、与党内では「このまま防衛相を続けさせると、政権へのダメージが拡大するばかり」(公明党幹部)と早期更迭を求める声が相次ぐが、安倍晋三首相自身が「女性首相候補」とまで評価して党・内閣の要職に抜擢し続けた稲田氏だけに、官邸サイドはなお、かばい続ける構えだ。

「加計学園疑惑」を主要テーマとして来週24、25両日に衆参両院で実施される予算委員会閉会中審査でも、野党の追及が稲田氏に集中することは確実で、逃げ場を失った"秘蔵っ子"に対して、首相が「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」ことができるのかどうかに永田町の注目が集まっている。

「虚偽答弁」なら議員辞職もの

南スーダンに派遣された陸上自衛隊の日報をめぐる隠蔽問題に絡み、一部メディアが19日に報じたのが「稲田防衛相が、防衛省幹部との2月15日の幹部会合で日報隠蔽を了承していた」との特ダネだ。具体的には、(1)「廃棄した」としていた2016年7月の日報が陸自内にも電子データで保管されていいたことが今年1月に判明、(2)それを公表するかどうかについて、稲田氏や防衛事務次官ら最高幹部が2月15日に緊急幹部会議を開き、その席で日報を非公表とする方針を決めた、という内容だ。

この日報については今年3月になって陸自にデータが残っていたことが明るみに出たが、国会で野党から「データが見つかったことの報告を受けたか」と追及された稲田氏は、「報告は受けていない」と否定。そのうえで「防衛省に隠蔽体質があれば、私の責任で改善していきたい」などと胸を張って、特別防衛監察の実施を指示した経緯がある。

それだけに、もし報道が事実なら、稲田氏自身が組織的な隠蔽工作に加担しながら国会で「虚偽答弁」を繰り返していたことになり、「大臣辞任どころか、議員辞職ものの不祥事」(共産党)となる。

報道へのコメントを求められた稲田氏は当初、「緊急会議を開いた事実はない」などと否定したが、数時間後には記者団に対し、当時の大臣日程などから防衛省幹部との「打ち合わせ」があったことは認める一方、「陸自から日報が見つかったとの報告があったとは認識していない」と苦しい説明に終始した。

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