要注意!生命保険の「お宝」なんて存在しない 昨今の「保険特集」にモノ申す

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まとまったおカネを持っていない個人が、取り組みやすい手法ではあるものの、一括して資金を投入する場合と比較して、どちらが有利とは言えないからです。

ただし、「ドルコスト平均法」に疑問を持っていない有識者や、外貨建て保険を利用することで「通貨分散ができる」といった、コストを無視した発言をしている有識者を見つける意義はあるかもしれません。要注意人物を知ることができるからです。

販売系のFPは商品の評価が甘い

各種の媒体に登場している独立系と呼ばれるファイナンシャルプランナー(以下、FPと表記します)の中には、保険代理店を兼業していたりする者が少なくないせいか、商品の評価が甘くなる傾向があります。

筆者は彼らを「販売系」FPと呼ぶことにしていますが、投資信託などで積極的な運用をする「変額保険」についても、ドルコスト平均法や分散投資の利点を語りながら、決定的なデメリットである保険商品の高い手数料については言及しないことが多いのです。

賢明な読者の皆さまには、「大人の事情」からデメリット情報の発信に消極的なFPが、「お宝保険」を打ち出して誌面を作りたい媒体から重宝される一面について、想像をたくましくしていただきたいと思います。

以上、3点、今後、貯蓄関連の保険商品の「お買い得」情報などに接した際に、無駄な時間を費やさないためにも、思い出していただけると幸いです。

最後に、例外的に「損得だけで考えると得だろう」と認識している商品について付記しておきます。明治安田生命の「じぶんの積立」です。10年間で払い込んだ保険料に対し、払い戻しされるおカネの割合は103%にすぎないものの、元本割れ期間がないので、生命保険料控除による税負担の軽減効果が見込めるのです。「10年間、毎年、数千円税金が安くなる定額預金のようなもの」と見る人もいるでしょう。

そんなわけで、子どもがいないため、民間の保険には未加入の筆者も、一消費者としては「使った者勝ちか?」と感じる保険です。ただ、どうしても加入する気にならないのは、ほとんど定期預金のような商品に、生命保険料控除が適用されることに疑問があるからです。

生命保険料控除という制度はその役割を終えている、と考えていることもあります。たとえば、生活への影響が限定的な「日帰り入院」のような事態まで保障する保険などは、必需品というより「嗜好品」ではないかと感じるのです。生命保険料控除が廃止されると、国の税収は年間数千億円増えるでしょう。筆者はそのほうが望ましいと思っているのです。

さらに、一般の方に「じぶんの積立」をあまり勧めたくないのは、加入後、同社の営業攻勢を受けると思われるからです。「じぶんの積立」は、保険会社の持ち出しが多くなる商品に違いないので、営業職員を動員して、他の保障性商品を提案することで、挽回して余る収益を狙うはずなのです。

ちなみに、「じぶんの積立」は情報誌の記事の中では「逸品」扱いでした。

筆者は、対面販売を行っている人たちの営業力を甘く見ないほうがいいと思っています。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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