日本とEUのEPAは、米英への誘い水となるか 優先順位が低かったEPAがまとまったワケ

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日とEUのEPA、陰の主役は「お騒がせ大統領」か。7月19日、ホワイトハウスで「メイドインアメリカ会議」を開催(写真:ロイター/アフロ)

当初は優先順位が低かった日本とEUのEPA

7月6日の日本とEU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)の「大枠合意」は、日本と欧州の経済関係について久しぶりの明るいニュースとなった。日本とEUのEPAの交渉開始は2013年3月に決まり、当初は2015年中を、2015年11月の日EU首脳会談後は「2016年のできるだけ早い時期」の「大筋合意」を目指してきたが、ここまで先送りが続いてきた。日本、EUの双方にとって優先順位が低かったためだ。

米国を最大の輸出相手国とする日本にとって、2013年3月に交渉参加を決めたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の優先度が高かった。EUにとっても域外の最大の輸出相手国は米国。期待も警戒も、2013年7月に協議を開始した米国とのTTIP(大西洋横断パートナーシップ協定)が、日本とのEPAをしのいだ。

そもそもEU側は、日本とのEPAにあまり熱意がなかった。関税面でのベネフィットを感じにくかったことが一因だ。

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日本とEUの間の貿易はWTO協定の税率に基づいて行われている。現状では、EUから日本への輸出品目の7割強に関税がかからないが、逆に、日本からEUへの輸出は7割近い品目に関税がかかる。韓国がEUとのFTAで先行したことで、日本にとっては、主力輸出分野である自動車にEUが課す10%の関税撤廃へのニーズが高かった。しかし、EUから日本への自動車輸出の関税はゼロ。2011年7月に暫定発効したEUと韓国のFTAでは、韓国が3年で8%の関税を、EUが5年で10%の関税を撤廃した。その結果、輸出の伸びはEU側の方が大きく、自動車の貿易収支は2014年以降、EU側の黒字に転換した。日本とのEPAでは、少なくとも自動車の分野で、こうした劇的な変化は期待できない。

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