「ことりっぷ」が切り開く旅行誌の新たな活路 独自の世界観に引かれたコミュニティが武器

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コミュニティをリアルなつながりに発展させるため、『ことりっぷ』では人気ユーザーを集めた交流会や、誰でも参加できるイベント、ワークショップも開催。定員に対して数倍の応募が殺到することも多いという。

たとえば、クラフトビールのイベントには募集枠50人のところになんと500人の応募があったほか、昨年9月に東京・上野桜木で行われた「ことりっぷ有田・唐津」出版記念イベントには2日間で2000人が詰めかけたという。

「コミュニケーション能力の高い人が多く、イベントでも参加者同士の情報交換が盛んです。ありがたいのがドタキャンする人がいないこと。欠席する場合でも、必ず連絡をくださるんです。読者のみなさんとのやりとりで、嫌な思いをしたことは一度もありません。コミュニティの質が高い、というと上からに聞こえるかもしれませんが、ちゃんとした人が多い印象です」(鈴木氏)

行動力・発信力・コミュニケーション力に優れ、社会常識を持ち合わせた20〜30代の働く女子。それが「ことりっぷ」のメイン読者層であり、最大の強みである。

「良質なコミュニティ」に注がれる熱い視線

こうした良質なコミュニティを有することりっぷブランドに熱い目線を注ぐのが地方自治体や企業である。実際、『ことりっぷ』には、毎週のようにタイアップやコラボの企画が持ち込まれるという。

特に多いのが女子旅を誘致したい自治体と共同で特別版の『ことりっぷ』を発行するパターンだ。

『ことりっぷ』本誌には広告は掲載されておらず、購読料が収益のすべてとなる。このため、旅先としてマイナーなエリアのガイドブックを製作すると赤字になる可能性がある。しかし、自治体が編集協賛といった形で経費を肩代わりしてくれれば、新しいエリアをじっくりと開拓することができるのだ。

『ことりっぷ』はこの形で「城崎温泉 出石・豊岡」「いわき」など、それまであまり取り上げられてこなかったエリアのガイドブックを年に3~4冊のペースで発行している。類書がないため読者からの注目度も高いという。

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