ユニクロ「エアリズム」が猛暑でも快適な理由 大ヒット機能性肌着に生きる東レの技術力

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エアリズムは消臭機能の向上など細かな改良が毎年のように施される一方、商品ラインナップも増えている。男性用では、2015年に通気性を高めた「メッシュ」編みタイプ、2016年にはシャツの上から肌着が透けて見えないよう、縫い処理の凹凸を極力なくした「シームレス」タイプの商品が登場した。

昨年登場したシームレスタイプは、東レの特許製法で首回りと袖のほつれ止め加工を省略。生地の凹凸が少なくなり、シャツの上から透けて見えにくい(写真:ユニクロ)

このシームレスは、別の意味で画期的な商品である。というのも、首回りと袖部分の衣地の端が裁断されたままの状態で、「ほつれ防止」の縫い処理加工を完全に省いているからだ。にもかかわらず、洗濯を繰り返してもほつれず、多少力を込めて引っ張ろうが破けない。

東レによると、この商品だけは引き裂きに強いナイロン製の極細原糸を使用し、特許製法を用いた特殊な経(たて)編み組織と特殊加工の組み合わせによって実現したのだという。男性用で昨年発売されると、ユニクロには女性から同様の商品を望む声が相次ぎ、今年から東レが手掛ける女性用シームレスタイプも発売された。

衣料用繊維の4分の1がユニクロ関連

東レと、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、今や切っても切れない深い間柄だ。両社は2006年に第1期の5カ年戦略パートナーシップを締結。東レはユニクロの専任部署まで設立し、ヒートテックや超軽量防寒着の「ウルトラライトダウン」、エアリズムといった大ヒット商品を生み出してきた。

ユニクロと東レの提携はすでに10年以上に及ぶ。写真は一昨年秋の共同会見(撮影:今井康一)

繊維ビジネスは東レの祖業で今も経営の大黒柱。昨年度(2016年度)の部門売上高は8561億円で、その約6割が衣料用途だ。ユニクロとの年間取引額は千数百億円規模にまで増え、今や衣料用繊維事業の売上高の4分の1を占める。

ユニクロにとって、ごく普通の化繊衣料はコストの安い中国企業などの活用で十分事足りる。東レが担当するのは化繊衣料の中でも、技術によって快適性などを高めた「機能性衣料」のカテゴリー。ユニクロが考える商品コンセプトを聞いたうえで、糸の種類や生地の編み方・織り方などの仕様を詰めていく。東レが自ら商品の企画を提案するケースもある。

「あらゆる点で従来の常識が通用しない」。GO事業部戦略開発グループの渡橋淳二・主任部員は、ユニクロとの取引をそう表現する。なにしろ、1アイテムの発注ロットがケタ違いに大きいうえ、商品の開発にはスピードが求められ、しかもコスト面の要求は非常に厳しい。

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