2020年度の財政黒字化目標は「絶望的」なのか 歳出増の幻想におじけづき諦めるべきでない

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2020年度の基礎的財政収支の黒字化はどこまで達成可能なのか(7月7日のG20・ハンブルクサミットで。写真:c SPUTNIK/amanaimages)

安倍晋三政権はいつまで財政健全化から逃げ続けるつもりなのか――。

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7月18日、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」(以下、「中長期試算」)を公表した。内閣府の「中長期試算」の位置づけについては、当連載でも「消費増税延期でも『赤字減少』試算のからくり」などで何度か触れている。

今回の「中長期試算」で注目されたのは、安倍内閣として閣議決定した財政健全化目標である、「2020年度の基礎的財政収支黒字化の達成」がより近づいたかだ。試算結果を示すと、内閣府の中長期試算で、2020年度の国と地方を合わせた基礎的財政収支は、前回の今年1月の試算では8.3兆円の赤字だったが、今回の試算では8.2兆円の赤字と、0.1兆円だけ赤字が少なくなるが、ほぼ変わらないというものだった(経済再生ケースの数値、以下同様)。

前回より国の歳入が減る前提の試算

今回の試算で情報が更新されたのは、2016年度の決算を踏まえたことと、直近の日本経済の情勢を反映したことである。この更新で最も大きな影響が出たのは、国の歳入であった。内閣府は試算の子細を示していないのだが、公表資料の範囲でいえば、2020年度における国の一般会計で、税収は前回試算より0.6兆円減ると見込まれ、税外収入を含むその他収入(公債発行による収入を含まない)は、前回試算より0.8兆円減ると見込まれている。これらを合わせて2020年度の国の一般会計では、前回試算より1.4兆円も歳入が減るという今回の試算結果となった。

これに対し、国の一般会計における基礎的財政収支対象経費(歳出総額から国債費を除いた支出額で政策的経費のこと)は、前回試算より0.7兆円減ると見込まれている。今回の試算では、歳入で1.4兆円減、歳出で0.7兆円減となり、2020年度の国の一般会計における基礎的財政収支は、0.7兆円赤字が拡大するという。

さらに、2020年度における国の特別会計等(一般会計以外)の基礎的財政収支は、前回試算より0.3兆円の収支改善が見込まれ、トータルで見て国の基礎的財政収支は、0.4兆円の赤字拡大になるとしている。

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