博報堂の打ち合わせは「50%が雑談」なワケ 新しい発想が次々と生まれる秘密

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1つの結論を導くために、最低でも100の案を検討する。最終的に、99の案は捨てることになりますが、それは決して無駄ではないと私たちは考えます。

打ち合わせでは、

「まだ俎上に載っていないアイデアは本当にないか?」

「見落としている視点や事実はないか?」

と、議論をどんどん拡散させていきます。

しかし、人はどうしても常識や固定観念にとらわれてしまいやすいので、「このアイデアは本題と関係ないだろう……」「こんなアイデアはさすがにありえない……」などと、無意識に頭の中でアイデアを取捨選択してしまいがちです。参加メンバー全員が、拡散の意識を強く持たないと、拡散はなかなか起きないのです。

そこで、有効なのが雑談です。

雑談には「使い方」がある

博報堂の打ち合わせの特徴を端的に示す、ある調査があります。2009年、東京大学大学院・教育学研究科の岡田猛教授の研究グループが、博報堂の打ち合わせを分析しました。

「博報堂の脱線しまくる『雑談力』と部署を越えた『越境力』が強いアイデアを生む」という報告書には、次のようなデータが記されていました。

博報堂の打ち合わせは、50%が雑談でできている。

たとえば、博報堂の打ち合わせでは「全然関係ないんだけど……」という言葉が頻繁に飛び交います。もはや博報堂の社員の口癖になっているといってもよいかもしれません。

実際には、その後に続く話は、「本当に関係のない話」ではなく、「本題の周辺」になります。そうやって、少しずつ議論を拡散させていくのです。具体的な会話例をご紹介しましょう。

【打ち合わせのテーマ】

顧客に好かれるカーディーラーになるにはどうすればよいか?

社員A:自動車を単に展示するのではなく、もっと好きになってもらうようにするにはどんな店舗にしたらいいだろうか?

社員B:やっぱり、店員が熱心に自動車を勧めることが大事なんじゃないかな?

社員C:でも、あまり声をかけてほしくないお客様もいると思うよ。

社員B:確かに、そうだよね……。

社員A:全然関係ないんだけど、ペットショップで子犬がゲージに入っているときは値段や種類が気になるんだけど、店員さんがゲージから出してくれて子犬と同じ目線になった瞬間に、「この子が好き!」って、その犬そのものに愛着が生まれるよね。あれってなんでだろう?

社員B:確かに、目線や距離は、人間の愛着を引き出す大事なポイントかもしれない。

社員C:ということは、座ったらクルマと目線が合うソファを入れて、展示品を「愛車」として感じられる店舗がつくれないだろうか?

次ページ打ち合わせの「終わり方」
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