トランプ・ジュニアの行動は「共謀罪」なのか 共謀罪の解釈・運用は日本でも参考になる

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トランプ・ジュニア氏がツイッターで公開したメールは、英国のパブリスト(広報マン)であるロブ・ゴールドストーン氏と交わされたもので、昨年6月3日から8日までの日付がついている。ゴールドストーン氏は、2013年にトランプ氏とロシアの富豪アラス・アガラロフ氏との共同主催によってモスクワで行われたミス・ユニバース・コンテストをサポートした人物であり、トランプ・ジュニア氏とは旧知の仲だ。

そのメールでゴールドストーン氏は、「ロシア検事総長によると、ヒラリー・クリントン候補が罪を犯しているという公文書や彼女のロシアとの取引情報がある。それをトランプ陣営に提供する用意がある。トランプ候補には非常に役に立つと思うが、どう思うか」とジュニア氏に伝えた。

これに対してジュニア氏は、「それはありがたい。もしその話が本当なら、”I love it”」と応じている。実は、この”I love it”の一言が大問題になっている。日本語に訳すと、「すばらしい」「最高だ」というニュアンスになる。

こういう明快かつ明確な言葉によって、相手に自らの意思を表明することは、もし両者の間で係争関係になったときには不利になることが多い。しかも、ジュニア氏はそれをツイッターで公開してしまった。その一言さえなければ、どっちに転ぶか、首の皮一枚で危機に追い込まれずに済むことになったかもしれない。

これは日本のビジネス社会でも学ぶべき教訓になる。つまり、相手のことを100%理解ないし信頼できていない段階では、決して明快かつ明確な返事をしてはいけないということだ。国際電話やメールでやり取りをしているとき、英語の表現でうっかり決定的な返答をすると、罪に問われることがある。

モスクワから来た女性弁護士の正体

ジュニア氏は、いったいなぜメールを公開したのか。その直前、メールの内容を何らかのルートでつかんだと思われるニューヨークタイムズ紙が、ジュニア氏に確かめるべく取材を申し込んだ。ジュニア氏はそれを拒否して自らメールを公開した、というのが真相らしい。自ら公開することによって透明性をアピールしようとしたのかもしれない。

現に、トランプ大統領は短い声明で、「長男は立派な人間だ」とジュニア氏を支持し、メール公開は透明性確保のために必要だったと擁護している。

そのメールには、さらに「近々モスクワからやってくるロシア政府の弁護士とも会ってほしい」とジュニア氏に面会を求めている。その弁護士はナタリア・ヴェセルニツカヤと名乗る女性弁護士。ジュニア氏は、昨年6月9日、ニューヨークのトランプタワーで設定した会合で、彼女に初めて会った。

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