婚活サイトで出会った僧侶夫婦の意外な生活 38歳での出家を前に「本気の婚活」へ

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涼子さんには結婚話が2回も流れた苦い経験があり、そこから立ち直ったからこそ見た目だけではない誠一さんの良さを見抜けたのかもしれない。最初の破談は27歳のときである。

「大学時代のインカレサークルで知り合った2歳上の人でした。7年間も付き合って、自然と結婚話になったのですが、最終的に私が逃げてしまったんです。1人でやりたいことがいっぱいあったし、看護師の仕事もバリバリやりたかった。彼は束縛するタイプだったので、別れた後にストーカーみたいになってしまいました」

お互いがより自由になり伸び伸びとできる結婚もある。しかし、20代の涼子さんにはそのような結婚は想像できなかった。恋人のほうも精神的に自立しておらず、束縛することで涼子さんの愛情をつなぎとめようとする男性だった。2人とも未熟で、結婚するには早かったのかもしれない。

2回目の破談はもっとつらいものだった。短期留学の仲間であり、気心も知れていて付き合い始めた男性が、涼子さんとの婚約中にがんを発症。あっという間に他界したのだ。

「体調が悪いと言っていて、病院にも通っていたのですが、原因が見つかりませんでした。私も看護師なので、分野は違うけれどいろいろ調べてはいたのですが……。がんだとわかったときには手遅れになっていました。まさに寝耳に水。彼が亡くなってからはボロボロになってしまいました」

すでに30代半ばだった涼子さん。男性と付き合うことにしんどさを感じ、4年ほどは1人旅や1人飲み、1人登山、1人ライブ鑑賞などの「ソロ活動」に邁進した。その頃、誠一さんも禅寺で座禅ざんまいの日々を送っていた。この2人、どこか似ている。

「37歳ぐらいの頃、キューピッドになるのが趣味の知り合いからやたらと男性を紹介されました。おいしい肉が食べられるBBQだと誘われて行ったら、私と男性を引き合わせるのが目的だったり……。いい人ばかりだったけれど、私はピンと来ませんでした。紹介してくれたのは年上の知り合いだったので、断るのも大変ですよ。私は何事も自分で決断をしたいタイプです。『結婚をするのかしないのか、40歳までに決めよう』と思って結婚相談所に入会しました」

筆者も「キューピッドになるのが趣味」な既婚者なので、涼子さんの言葉には軽いショックを受けた。よかれと思ってセッティングした食事会などが有難迷惑になっている危険性もあるのだ。少なくとも涼子さんは、しがらみのない結婚相談所で自由に相手を探すことを選んだ。

最初から意気投合

「20代から50代までの幅広い人とお見合いしましたが、しっくりくる人はいませんでした」

誠一さんは15人目のお見合い相手である。申し込んだのは涼子さんのほうからだ。

「スキンヘッドにスーツ姿という写真がまず面白いと思いました。プロフィールの文面も自分で一生懸命に書いてあることが伝わってきます。結婚相談所のおばちゃんの手が入ったような文面ではありませんでした」

スキンヘッドではなく剃髪である。誠一さんは職業欄に僧侶とちゃんと書いた。しかし、涼子さんは相手の職業をあまり重視していなかったのだ。

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