「賃貸住宅市場が危ない」、日銀が異例の警鐘 金融緩和による住宅過剰、物価を下押し?

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だが、マクロ指標を都道府県別に見ると、少し違った賃貸住宅市場の姿が浮き彫りになる。トヨタ自動車などが出資する不動産評価・情報提供会社「タス」は、首都圏や関西圏の空室率を毎月、集計・公表している。その空室率インデックスで見ると、首都圏では東京都心部はさほどでもないが、埼玉や神奈川、千葉の各県で特に2015年後半以降、空室率が急上昇している。

同社の藤井和之・新事業開発部長は「賃貸住宅の着工数はリーマンショック前の水準に戻っただけでまだバブルではない。しかし、この状態が2~3年続くとバブルとなるかもしれない」と指摘する。

賃貸住宅の市況はさらに悪化しそう

同社はデータユーザー向けに不動産市況のアンケート調査を行ってD.I.(景況指数、50が中立)を作成しているが、これによると、賃貸市場の現況D.I.は50を下回り、市況は相変わらず厳しい。将来D.I.もすべての地域で現況D.I.を下回っており、将来の市況はさらに悪化するとの懸念が高まっている。

また、首都圏でも特定の地域に集中して賃貸住宅が建設されている実態がある。藤井氏は「たとえば横浜。広さ20平方メートル以下のワンルームなど単身者向けの賃貸住宅が、集中的に大量供給されている」と話す。単身者向けが建設されるのは、人口構成上、単身者世帯が増加しているうえ、単身者向け住宅のほうが面積当たりの賃料が高く、採算が取りやすいからだという。

一方、今年2月には愛知県のオーナーが業界大手のレオパレス21を提訴し、家賃減額分の支払いを求めて争っており、業界内で大きな注目を集めている。大東建託やレオパレス21など、右肩上がりで成長してきたサブリース業界にとって、曲がり角の事件となるかもしれない。

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