地方を活性化する起爆剤はエンジェル投資だ 新規開業への「温かい資金の流れ」を作ろう

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その立役者が、みやこしビジネスサポート代表の宮越正士氏です。同氏は大手証券会社で法人設立、増資、IPOの業務を経験し、その専門知識を武器に、長野県のアドバイザーとして活躍。エンジェル投資のエバンジェリスト(伝道師)とも呼べる存在です。宮越氏は、会議に出席した自治体担当者に向かって、他の地域でも実行可能と呼びかけます。

「長野県では、当時他県ではやっていたファンドによる地域振興でなく、エンジェル投資による創業促進、地域企業の支援を選択。まちおこしのための住民参加型企業の設立を進めてきました。クラウドファンディングでは期間が限定されるので、無議決権株式によるエンジェル投資を促進。エンジェル税制はその呼び水になっています。面倒なところもありますが、法律や規則を理解したうえで、うまくつなぐ方法を考え、住民説明会や、設立・増資の手続きなど丁寧に対応しました。これからの時代、地方のソーシャルビジネスや荒廃農地の再生に取り組む農業の担い手には、6次産業化による収入増等を検討する手段が必要です。エンジェル税制の活用を通じた自己資金調達方法が知れ渡ると地方の活性化に弾みがつくと感じています」(宮越氏)

エンジェル投資で夢を実現

長野県でのエンジェル税制の活用例のひとつが、楠ワイナリー。「健康的なブドウから造られた、日本の食事によく合うワイン。優しく上品なワインを追求したい」。楠茂幸社長は、サラリーマンを退職し、新規就農者として、長野の気候に合うブドウの栽培方法から始まる理想のワイナリーの経営を目指しました。しかし、当然、金融機関からの借り入れでは十分な資金調達はできません。夢の実現に大きな力となったのはエンジェル投資です。

宮越氏のアドバイスを受けて、ワイナリーの考え方に共感する経営者、地域住民にエンジェル投資を募りました。経営がぶれないようにするため、無議決権の種類株式のスキームを選択しています。楠社長は当時を振り返ります。

「無議決権で、当面は配当もありません、ほとんど、”おカネをください”といっているような条件にもかかわらず、49人の出資者が集まってくださいました。リターンはいいから、年に1回集まっておいしいワインを飲もう、そう言ってくださる方々もいました。皆さまの期待に応えられるかどうかもわからず、肩身の狭い思いをしていた私にとって、エンジェル税制の減税効果は、アップフロントで少し恩返しができるので、ありがたかったです」(楠氏)

現在は、89人の株主から、9000万円を超える資金調達が実現、スパークリングワイン棟もできて、理想のワイナリーへの着実な歩みが続いています。

楠ワイナリーの商品ラインナップ(写真:楠ワイナリー)
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