海外鉄道マン、「忘れ物回収」で日本流目指す 山手線で紛失した旅券が無事発見され大感激

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KCJのファディラ社長が、現地メディアへの取材に答えたところによると「1カ月に車内で発見される忘れ物は150点ほど」で、回収された拾得物は同社の本社があるジュアンダ駅のコントロールセンターに集められる。ファディラ社長によると、忘れ物の発見は「利用客による申告や届け出をはじめ、コントロールセンターでの対応、スタッフの駅や車内での捜索などが総合的に機能している結果だ」としたうえで、これまでに、ラップトップパソコンや貴重品の入ったバッグなどを無事に持ち主に返すことができたという。中には、5000万ルピア(約48万円)の現金も回収できた例もあるそうだ。

車内での忘れ物を駅員に引き渡す警備員(写真:前田健吾・前KCJジェネラルマネジャー提供)

「KCJでの忘れ物」といえば、先に筆者が紹介した「南武線で失くしたスマホ、ジャカルタで見つかる」という出来事がある。中古車両のメンテナンス中にいすの下にひっそりと隠れていたスマホを発見したKCJの技師・オマットさん。彼も初訪日の際、日本への友人に渡すはずだったジャカルタからの土産を東京メトロ日比谷線車内の網棚に置き忘れるという失態をやらかした。しかし幸運なことに、中目黒駅で無事回収できて一安心、という一幕もあった。

「忘れ物」がつなぐ日本とインドネシアの奇縁。ジャカルタ―バンドン間の高速鉄道では受注目前で中国にさらわれるなど、政治的にややキナ臭い状況が続いているが、一方で日本の鉄道の優れたサービスを学び、現地に根差す文化に変えようと一生懸命に取り組んでいるインドネシア人たちがいることを忘れてはならない。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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