伊豆を走り出す「青い豪華観光列車」の実力は 「ザ・ロイヤルエクスプレス」はこんな列車だ

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多目的に使える「マルチカー」3号車。テーブルや椅子は取り外すことができ、壁際にパネルを設けて展覧会などもできるという(撮影:尾形文繁)

クルーの中で「第1期生としては2人だけ」という新卒採用者のうちの1人、鈴木陽和さんは「クルー募集の広告を見た時『これしかない』と思った」といい、クルーになるため伊豆に転居。「緊張や不安もあるが、今はワクワクでいっぱい。お客様のワクワク感のために頑張りたい」と意気込む。

新しく登場する観光列車だけに、最初からマニュアルなどが整っているわけではなかった。「お客様にもっと喜んでいただくためにはこうしたほうがいいと、みんなで話し合ってサービスを形作ってきた」。一番難しいのは、揺れる列車の中で食事や飲み物の提供などを行うこと。水戸岡氏からは「段差がある部分で食事の提供などをする時は、テーブルに身体をつけながらでもいい。何より安全を第一に」といったアドバイスを受け、サービスの方法も研究を重ねたという。

人気のほどはいかに?

伊豆高原駅に隣接した車庫で開かれたお披露目のセレモニー(撮影:尾形文繁)

ザ・ロイヤルエクスプレスは、食事付きの乗車プランと宿泊を組み合わせた1泊2日の「クルーズプラン」があり、前者はゴールドクラスが大人1人あたり2万5000円、プラチナクラスが3万5000円。後者は2名1室で13万5000円から15万円。7月の時点では全300席に対して600の応募があり、最も人気の高かったプラチナクラスの倍率は10倍強だったという。

まずは好調なスタートといえそうなザ・ロイヤルエクスプレス。お披露目セレモニーのラストで、東急電鉄の野本弘文社長は「私どもは『舞台』をつくっただけ。これから地元の皆さんと一緒に取り組むことで、多くのお客様に何度も伊豆に来ていただけるようになるのではないかと思う。その舞台の最初の入口にしたいと思っている」と述べた。

JR東日本の「トランスイート四季島」やJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」、さらに水戸岡氏デザインの「ななつ星in九州」といった豪華クルーズトレインが脚光を浴びる中、これらと比べれば手の届きやすい価格帯で首都圏に登場する「ザ・ロイヤルエクスプレス」。全国各地を観光列車が走る「激戦」の時代に、伊豆を走る青い列車はどのような評価を受けることになるだろうか。運行開始はもうすぐだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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