米長期金利上昇は続かず、ドル安円高へ進む

JPモルガン・チェース銀の佐々木融氏に聞く

金融政策ではどうにもならないことが起きているのではないか。0.25%の利上げや利下げにどれだけの効果があるのか。まして、金利が動かない量的緩和にはそもそも意味がないと考えている。世界経済には何か大きな変化が起きていて、これまでの常識的な金融政策の範疇から考え出されている量的緩和とか、イールドカーブ・コントロールといったたぐいの政策では影響が限られてしまうのではないか。日本銀行が2%のインフレ率達成を目指しているといくら言っても、それが広く一般国民に浸透しているとも思わない。

――今後のドル円の行方をどう見ていますか。

ドル安円高方向と見ている。これは円高ではなくてドル安ということだ。円も主要通貨の中では安いが、ドルがもっと安くなる。よく金融政策の方向性が違うというコメントを聞くが、私は、今は方向性は違っておらず、温度差がある程度だと思っている。日銀も明確に言っていないだけで、実際には年間80兆円の国債買い入れペースを60兆円規模に落としている。引き締めを、経済の過熱に水をかけるものであるとするならば、日銀は水に近いぬるま湯をかけている状態といえるかもしれない。

長期的な基調がドル安だと見ている理由の基本は、米国と日本の物価上昇率の差だ。この10年間でその差は20%もある。年間2%の差だ。米国の物価が年間2%上がっているということは、ドルの価値が円に対し2%下がっているということだ。今でもそうとう円は割安になっているので、長期的な基調はドル安円高だと見ている。

今年の基調が「ドル安」となる理由

当初からドル安を予想していたのは、前述のように、FRBが利上げをしても長期金利は上がらないことと、そもそもドルは強くなりすぎていると見ていたことが理由だ。ドルは2014年、2015年と2年連続で最強通貨になっていたが、これは、それまでエマージング市場に流れていた資金がドルに戻ってきたためだ。ドルはそもそも強い通貨ではない。最強通貨になったのは2001年以来だった。これには限界が来ると思っていた。案の定、トランプ大統領が就任してドル高に対して文句を言い始めた。

2015年末に、2016年はドル安円高になると予想していたが、このときはドル安ではなく、円高予想だった。2012年から2013年、2014年と円安だったが、2015年に円安が止まった。ただドルも強かったので、ドル円だけを見ると円高に転換したことに当時は皆が気づいていなかっただけだ。

今回はドル安予想で今も変わっていない。ドルはもっと弱くなると思う。まだ売られ方は中途半端なので、ドルは下がる。FRBが利上げしている期間は、逆にいえば世界経済の状況が良好な状態だということなので、エマージング通貨は下がらない。

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