タカタ倒産劇で透けて見える「銀行側の事情」 変わるメインバンクと企業の距離感

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企業とメインバンクの関係も従来とは変わってきた(撮影:山田雄大<左>、今井康一)

6月26日、エアバッグのタカタが1.5兆円もの負債総額を抱え民事再生法の適用を申請した。製造企業としては戦後最大の倒産である。ということは、言い方を変えれば、この規模の製造業はこれまで法的整理を回避し、何らかの形で生き延びてきたということだ。タカタはなぜ法的整理を余儀なくされたのか。

メインバンクと大企業の蜜月時代

かつて日本で問題企業処理といえば「私的整理」が一般的だった。私的整理とは、取引銀行たちが貸し出しなどの債権を放棄する比率などを話し合い、企業の再生を図るものだ。東芝は今のところこのルートに乗っている。

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私的整理の場合、「法的整理」、すなわち「倒産」ではないので、弁護士などの費用が少なく、多くの場合上場も維持できる。社債も通常はデフォルト(債務不履行)とは見なされない。

反面、私的整理の弱点は、裁判所という第三者が介入しないため、取引銀行に不満が出やすいことだ。もめ始めると、時として収拾がつかなくなる。このため、私的整理では、結局メインバンクが負担額を大きくすることで、ほかの取引銀行をなだめるのが一般的だ。

私的整理の最初の事例は1995年に経営難に陥った石原建設だった。このケースでは、主力の三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)らが貸出債権を全額放棄して決着した。交渉開始当初、三菱信託銀行は、全取引銀行に同等の負担を求めたが、一部の銀行は納得しなかった。結局、中には金利だけ減免し元本はまるまる回収した銀行もあった。

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