外国人留学生がガッカリする日本の就職事情 政府も企業も大学も「宝の持ち腐れ」だ

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日本で学ぶ外国人留学生の多くが、卒業後も日本で働くことを希望しています。日本での就職希望者は、博士課程で56%、学部卒で70%に及びます。にもかかわらず、実際に日本で就職するのは、博士課程では18%、学部卒で30%ほどにとどまります(日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査結果」より)。

外国人留学生が日本企業へ就職するには、いくつもの壁があるのです。

年齢制限や外国人に対する偏見も…

まずは、企業側の採用に対するスタンスやマインドです。たとえば、依然として「外国人=低賃金労働者」と考える企業が多く、留学生の就職先の業種には大きな偏りがあります。最も多い業種は、小売業・サービス業。しかも、当たり前ですが、入社後数年は間違いなく、現場配属です。

ただ、自国で高等教育を受けた人材や、日本で上位大学に入る力のある人材が、忙しいオペレーションの毎日を過ごし続けると、どうなるでしょうか。わざわざなじんだ自国を離れて、外国語を習得し、日本でビジネスをしてキャリアを築いていこうという気持ちが、だんだん萎えていってしまいます。特に大都市ではまだしも、地方の拠点の職場では、外国人はまだまだ「出稼ぎ労働者」のような見方をされてしまいがちです。そんな毎日が続くと、「私はなんのために日本まで来たのだろうか」と悩み、他国に行ったり、自国に戻っていってしまうのです。

日本人と同等か、それ以上の優秀な海外人材が大勢いることに気づいていない日本企業が少なくないのです。これは単なる偏見であり、認識不足としかいいようがありません。終身雇用が大前提であるため、面接で「将来は帰国したい」と言うと、不採用になることも多々あると聞きます。その「将来」が数年後などではなく、もっと遠い将来かもしれないにもかかわらずです。

海外では、いったん社会に出て学費を稼いでから大学院へ戻るケースが多々あります。その人が日本の大学院へ留学し、日本企業で就職しようとした場合、就業経験が認められず、しかも新卒としての年齢制限があり、書類選考の段階で落ちることもあるというのもしばしば耳にする話です。

日本で働くことを希望しているにもかかわらず、「留学生向けの就職情報が少ない」という問題もあります。留学生たちによれば、なかでも中小企業の情報は非常に少ないそうです。実際には人材不足に悩んでいる中小企業は少なくないはずなのに、チグハグに感じます。

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