日本の「非効率な医療現場」は外国人が変える 医療ベンチャー「エンタッチ」の挑戦

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そこで、エンタッチはネットや電話で、MRと医師がやり取りできるサービスを提供。医師が自分の都合のよい時間に、エンタッチが契約するMRに質問ができるようにした。

変化はすぐに現れた。

従来の訪問営業では、医師とMRの面会時間は最大5分程度だったが、エンタッチを利用することで平均面会時間は25分に伸びた。また、MRが医師により医薬品情報などをきちんと伝えられるようになったため、面会後の製品売り上げも従来の訪問面会後より大きく伸びるようになった。

支援してくれる人を探すのに一苦労

また、エンタッチを利用した医師に、毎回アンケートを実施。それぞれの医師が、各製品の情報をどの程度知っているのかを把握することで、次回以降、どういう情報を提供すべきかをわかるようにした。アンケートをベースとしたフィードバッグを収集しデータベースを構築し、アルゴリズムを用いて分析することで、どの医師が製品採用においてどの段階(製品を知ったばかりの段階、試している段階、常用している段階、得意客)にあるのかもわかるようになった。

医師側も、より効率的に製品情報を得られているだけでなく、アンケートに答えることによって、医薬品開発の一助を担っているという満足感を得ることができる。ロバーツ博士は、この方法が「製薬会社と医師がコミュニケーションを取る最も効率的な方法だ」と見ている。

日本での起業にこぎ着けたロバーツ博士だが、ここまで来るには苦労も少なくなかった。経営陣選びから資金集め、そして顧客開拓――。製品の売り上げもないうちに、その製品を作るための資金を調達しなければならないという堂々巡りは、一生続くのではないかと思われたほどだ。ロバーツ博士はその過程をこう振り返る。「頂上に登り切ったと思った瞬間、次の頂上まで登る必要があるのだと気がつくようなプロセスだった」。

幸い創業資金やオフィス、アドバイスなどは、セジデムで働いていた頃に共同事業を立ち上げたことがある、連続起業家から得ることができた。日本政策金融公庫も、事業立ち上げのための融資を提供してくれた。「支援してくれるところは必ずあるのだろうが、とにかく探し出さなければならなかった」と話す。

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