一流の経営者は「丁寧な人事」を心掛けている 異動を命じる際には慎重な手続きが不可欠だ

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突然に人事異動を命ずると社員にとってかなりの負担になりますし、よほどでないかぎり家族も驚きと不安に駆られます。なんとなく覚悟をさせていくことで不安は解消されますし、なによりもじっくり考えたうえでの人事であることが伝わる。経営者たるものは丁寧な人事異動を基本に考える必要があると思います。

もちろん、そのような話をすると、どうしても新部署には行きたくないなどと言い出す場合があります。あるいは新しい職場には向いていないということがわかるかもしれません。その場合には異動を中止し、他の社員を探すことも必要になってくるでしょう。

とにかく、人は誰でも「突然」に驚くものです。驚くだけならいいのですが拒否反応を示す。ですから、人事異動では、本人を驚かせたり恐怖心を起こさせたりしてはいけません。つねに「予告人事」を心掛けるべきだと思います。「人事は仁事」でなければなりません。

さらに異動を決める場合にも、できるだけ社員が将来に不安を感じないようにする必要があります。可能なかぎり、その後の異動についても未確定だとしても示すようにするべきです。

異動の指示があった。そこが自分の思っていた希望していた職場なら、部下は前向きに受け止めるでしょう。しかし、考えてもいなかった職場、あるいは行きたくない不本意な職場への異動ということになれば、戸惑いと同時に自分の将来はどうなるのかと不安に駆られる社員が出てきます。なかには「異動は不本意なので退職する」と言い出す社員も出てくることでしょう。

異動で退職されては元も子もない

会社としては、その社員に異動して活躍してもらいたいと考えているのですから、やる気をなくしてしまう、あるいは退職されてしまうということでは困ります。そのように追い込まないためにはどうすればいいのか。

必要なのは見通しを示すことです。「3〜5年間はその職場でやってもらうが、その後については君の希望を聞こうと考えている」と予告することです。先のことがわかれば、異動先の職場が納得できない場合でも、その社員は、3〜5年間我慢すればいいのかと安堵します。その先のことも考えて異動先で一生懸命仕事に取り組んでくれと言えば、その社員は「わかりました、頑張ります」という気持ちにもなると思います。

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