19歳でプロ野球選手に嫁いだ妻の波瀾曲折

巨人のスター「松本匡史」をいかに支えたか

このとき、匡史さんはセ・リーグの他球団から熱心なオファーがあったにもかかわらず、それを断っていた。これまで匡史さんを陰で支えてきた由佳さんだったが、このときばかりは思いが爆発した。「現役を続行できるのになぜしないのか?」。

理由を問いただした由佳さんに匡史さんは「巨人以外のチームでプレーすることは考えられない。やっぱり俺、長嶋さんを裏切れないよ」。その言葉は、由佳さんの胸に突き刺さった。2人で歩んできた8年間の道のり、現役選手の妻としての時間は、このとき終わりを告げた。

引退から1年。匡史さんは34歳の若さで、巨人のコーチに就任するが、それも波乱続きだった。指導者としての仕事は、想像以上に過酷だった。コーチ就任2年目、匡史さんはたまっていたストレスから自律神経失調症になり、自宅から出られない日々が続く。

由佳さんは当初、見守ることしかできずにいたが、匡史さんが病を発症して2年半後。長嶋さんが、巨人の監督に復帰することになった。それを知った由佳さんは、強く決意する。「夫を元気にして、もう一度、長嶋さんと野球ができるようにしたい」。

夫の病気を治すため、妻は東奔西走した

あらゆる病院やカウンセラーを訪ね、匡史さんの症状を改善する方法を探し回った。その中で見つけたのが血行を良くするストレッチ。まず自分が習い、夫にそれを施した。そして夫が病に襲われてから3年、自律神経失調症を克服できた。その後、匡史さんは巨人の2軍監督に就任。このとき、1軍の監督は長嶋さんだった。2人の運命はここで再び交錯した。匡史さんは長嶋監督の力になりたい一心で、仕事に打ち込んだ。

夫婦の絆が過酷なプロ野球の世界をわたっていく原動力となった。TBSテレビ「プロ野球選手の妻たち」は7月17日(月・祝)よる7時から放送です

匡史さんが2軍監督になって2年目の1996年、長嶋監督率いる巨人は、奇跡の大逆転優勝を果たす。首位の広島に最大11.5ゲーム差をつけられながらもひっくり返し、「メークドラマ」と呼ばれた勝利だ。その年の新語・流行語大賞にもなったほど。松本夫婦は万感の思いを胸に、その胴上げの瞬間に見入った。

その後、夫は2001年に長嶋監督の下、1軍のコーチに就任。そして、その年のオフ、長嶋監督が勇退すると、夫も巨人のユニホームを脱いだ。それは長嶋さんと運命が交錯する中で結ばれ、運命を左右された松本夫婦のプロ野球における過酷な戦いが終わった瞬間でもあった。

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