世界一のアントレプレナーが語る企業の「社会的意義」とは | 愚直に続けたから 成功した、 ワケじゃない

世界一のアントレプレナーが語る<br />企業の「社会的意義」とは

世界一のアントレプレナーが語る
企業の「社会的意義」とは

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第11回目の連載となる今回は、モナコ公国からのレポートになる。何のレポートかと言えば、これまでのインタビューに登場してきた日本のアントレプレナーたちが目指していた世界大会、「EY World Entrepreneur Of The YearTM(以下、WEOY)」だ。大会期間中、街はWEOY色に染まる。WEOYののぼりが街中に立ち、WEOYのための花火が上がる。そんな舞台で、「ワールドチャンピオン」の称号を得たのはどのようなアントレプレナーなのか。6月7日から10日の熱い4日間の模様をお伝えする。


グーグルもアマゾンも
過去には名だたるアントレプレナーが参加

東京がまさに梅雨入りした頃、乾いた太陽が肌を痛いほどに照りつけるモナコには、世界各地から1000人を超えるビジネスリーダーたちが結集していた。1986年に米国で初開催され、2001年からはモナコ公国を舞台に世界大会を開催している「EY World Entrepreneur Of The Year」に参加するためだ。

「The Better The Question. The Better The Answer. The Better The World Works.(より良い問題提起が、より良い解決への扉を開く。そしてより良い社会に向けて一歩前進する)」を掲げるWEOYは、60カ国145都市が参加する「アントレプレナーのオリンピック」としても知られている。過去には、スターバックスのハワード・シュルツ、デルのマイケル・デル、グーグル共同創立者のサーゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、アマゾンのジェフ・ベゾスなどが米大会にエントリーしてきた。

カフェ・ド・パリ、カジノ・ド・モンテカルロなど、モンテカルロの名所が集まる広場にWEOYののぼりが立つ

ここは、激戦を勝ち抜いてきた各国代表のアントレプレナーたちの中からワールドチャンピオンを選出する場であると同時に、革新的なアントレプレナーたちやベンチャーキャピタリスト、インキュベーターらが世界中から一堂に会し、出会い、つながり、時に激論を戦わせ、アイデアをシェアし合って、「ベターワールド」の実現を推進していくためのプラットフォームでもある。

期間中は、F1モナコグランプリのヘアピンカーブを眼前に望むフェアモントホテルをメイン会場に、その時々の時代の趨勢に沿ったテーマのもと、数々の基調講演やパネルディスカッション、ラウンドテーブル、ワークショップなどが開催される。今年は、「Could uncertainty be your best opportunity for growth?(不確実さは成長の絶好の機会となりえるか)」を大テーマに、ビッグデータ、 IoT、スマートシティ、生命科学、フィンテック、アフリカ……といった旬な議題が、さまざまな角度から議論された。


講演にはアカデミー女優
ケイト・ウィンスレットも

「これからのアントレプレナーは、アイデアだけではいけない。すばらしいアイデアを自ら実現できる能力が、ますます必要になるだろう」

世界中から集まった若いアントレプレナーたちに向けてこう語ったのは、今年の目玉の一つである基調講演を行った米国のシリアルアントレプレナー、マーク・キューバン。総資産34億ドル*と言われ、大統領選挙への出馬もうわさされた人物だ。

キューバンのアントレプレナーとしての原体験は、子どもの頃、近所の住民たちにゴミ袋を売り歩いて小遣いを稼いだこと。あまたの事業を成功させては売却してきたキューバンではあるが、その成功は、地道な努力の積み重ねだったと訴えた。それゆえか、講演後の質疑応答で、オーディエンスのひとりであった若きアントレプレナーが、投資家としての顔も持つキューバンに自身の連絡先を渡しにいくと、「私が君に連絡するってことか? 君が私の連絡先をどうにか努力して見つけ出して、連絡してくるのが筋じゃないか?」と苦言を呈し、オーディエンスの眼前で、連絡先が書かれたメモ用紙を引き裂き、その場に捨てた。とはいっても、その表情は終始笑顔で、若きアントレプレナーを煽り、鼓舞するようでもあった。

米国のシリアルアントレプレナー、マーク・キューバンと、英国のアカデミー女優、ケイト・ウィンスレット

そのほかにも、米国の大手化粧品会社、エスティ・ローダー・カンパニーズ・インクのウィリアム・ローダー、世界有数のITコンサルティング・ソフトウェア会社、インフォシスCEOのヴィシャル・シッカ、シンギュラリティ大学教授のヴィヴィアン・ミンといった才気あふれる論客たちが白熱した議論を交わし、さらに、最終日のクロージング・キーノートにはアカデミー賞受賞女優のケイト・ウィンスレットが登壇。飾らない口調で自らの失敗談から成功体験までを披露すると、会場は温かい雰囲気に包まれた。

*米『フォーブス』による


エアウィーヴ・高岡会長の戦い
「結果ではなくプロセスとストーリー」

さて、今年のWEOYには、49カ国を代表する計59人のアントレプレナーたちが参戦している。中には、マリオット・インターナショナル会長のビル・マリオットなど「超」のつく大物もいるが、その多くが、日本ではあまり知られていない多彩な顔ぶれ。企業規模も事業内容もそれぞれに異なるが、皆、壮大な起業ストーリーを背負った人たちであり、誰が勝ってもおかしくない。

「各国の代表者たちと言葉を交わすことで、日本にいるだけでは決してわからない、本当の意味でのダイバーシティを実感することができた。モナコでの大きな収穫の一つです」

日本代表としてモナコ入りしたエアウィーヴの高岡本州会長は、最後の面接を終え、充実した面持ちでこう語った。高岡会長は続ける。

日本代表のエアウィーヴ高岡会長。6名の社員と共に世界一を目指した

「ここでは、ビジネスサイズや経営戦略よりも、事業に対する情熱やより良い世界に貢献したいという使命感が重視されます。それこそが、EYが考える現代のアントレプレナーシップだからです。起業に駆り立てた情熱は何か、それが世界にどんなインパクトを与えうるのか。そして、起業から今に至る過程でどんな困難にいかに打ち克ち、これから進化していこうとしているのか……。つまり、結果ではなくプロセスとストーリーが問われるわけです。審査員たちを魅了するためには、自らの軌跡や、最も大切なメッセージとは何かをあらためて整理し、言語化する必要があります。私たちにとっては大きなチャレンジでしたが、これまでとは異なる指標、視点で自分たちの物語を振り返ることができた、かけがえのない経験でした」

今年の審査員団を構成するのは、米国のニクソン・エナジー・インベストメント会長兼CEOのジム・ニクソン審査員長を筆頭に、昨年の世界チャンピオンに輝いたムース・エンタープライズのマニー・スタル、同じくフィンランド代表だったスーパーセルCEOのイルッカ・パーナネン、2010年の中国香港・マカオチャンピオン、グレース・ワインヤードのジュディ・チャンなど、全員が過去の参加者たち。つまり、アントレプレナーがアントレプレナーを審査するというシステムだ。

審査プロセスは完全非公開で行われるため、取材陣が最終面接に立ち会うことも、協議内容の詳細を聞くことも叶わないが、発表直前にジム・ニクソンを直撃すると、「実に難しい審査だった」と言い、こう続けた。

「私たち審査員団が重視したのは、アントレプレナー精神、勤勉さや誠実さ、革新性、目的に重きを置いたリーダーシップ、世界への貢献、価値創出です。それらのどれが欠けてもいけない。こうした価値の総体として、真のアントレプレナーシップは生まれるのだと思います」

そして6月10日夜、サル・デ・エトワールでの贅を尽くしたディナーの後、ついにウィナーが発表された。


「社会起業家」という概念は
もはや過去のもの

2017年のワールドチャンピオンに輝いたのは、カナダのAGTフード&イングリディエンツ社CEOのムラッド・アル・カティブCEO。移民の両親のもとカナダに生まれた、若き成功者だ。カティブCEOは2001年、サスカチュワン州国際貿易促進協会の職を辞し、レンズ豆ビジネスを自宅ガレージで創業。以来、凄まじいスピードでビジネスを拡大し、2007年には上場も果たした。現在は120カ国にレンズ豆やひよこ豆、えんどう豆を供給する、年商約15億ドルを誇る巨大企業へと成長させている。

ワールドチャンピオンに選ばれ、情熱的なスピーチをするカナダのムラッド・アル・カティブCEO

彼が今回もっとも高く評価されたのは、世界の喫緊の課題である世界食糧危機に対する一つのソリューションを提示していること、そして、より持続可能な農業のあり方をカナダにもたらしたこと、さらには発展途上国や難民への植物性プロテインの提供という、ソーシャルな側面が強い。しかしカティブCEOは、受賞スピーチで、喜びと感謝を伝えたあとで次のように語り、時代の変化と新しいアントレプレナー像を印象づけた。

「『社会起業家』という概念は、もはや過去のものになりつつあると感じています。私は、そうした分類をなくしたい。なぜならば今、そしてこれからの世界において、ビジネスにおける社会的側面は『重要』ではなく、『不可欠』だからです。すべてのアントレプレナーは、『社会的意義』を持つべきなのです」

あらゆる価値が変わりつつある現代にあって、アントレプレナーに求められる思想や精神、そしてアントレプレナーシップの定義が変化していくのは必然と言える。それはすなわち、未来の企業のあり方を大きく変革していくことにもなるかもしれない。そういう示唆に富んだ4日間だった。

次回(8/28予定)は、今回のWEOYファイナリストたちへの取材から見えてきた、これからの世界に求められるアントレプレナーシップについて、あらためて考察を試みたい。


 

“世界一”を決めるアントレプレナー表彰制度
EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーとは?
 EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーは、1986年にEY(Ernst&Young=アーンスト・アンド・ヤング)により米国で創設され、新たな事業領域に挑戦するアントレプレナーの努力と功績を称えてきた。過去にはアマゾンのジェフ・ベゾスやグーグルのサーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジらもエントリーしている。2001年からはモナコ公国モンテカルロで世界大会が開催されるようになり、各国の審査を勝ち抜いたアントレプレナーたちが国の代表として集結。“世界一のアントレプレナー”を目指して争うこのイベントは、英BBCや米CNNなど、海外主要メディアで取り上げられるほど注目度が高い。