G20サミット、温暖化対策で米国が「孤立」  パリ協定脱退で他19カ国・地域と対立が鮮明

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ドイツのハンブルクで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は8日、2日間の日程を終えて閉幕した。7日撮影(2017年 ロイター/Ian Langsdon)

[ハンブルク 8日 ロイター] - ドイツのハンブルクで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は8日、2日間の日程を終えて閉幕した。

9月のドイツ総選挙を前に国際政治の仲介役としての自らの手腕を強調したいメルケル首相は、議長を務めた今回、貿易、金融、エネルギー、アフリカ支援の分野で全会一致の首脳宣言を採択するという第一の目標は達成できた。

一方、気候変動問題では米国と残りの19カ国・地域との意見対立が鮮明となり、温暖化対策における国際協力体制を揺るがす結果となった。

トランプ米大統領は先月、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から米国が脱退すると発表した。

メルケル首相は首脳会議後、記者団に対し「気候問題に関する交渉では、各国が米国に対して反対意見を表明していた」と発言。

「貿易に関する討議が極めて難航したのは米国が特定の立場を取っているためだ」とも述べた。

世界の地政学的構図は大きな転換期を迎えている。

トランプ政権が「米国第一主義」の下で一方的な取引外交を推進する中、世界のリーダーシップに空白が生じ、米国の同盟国である欧州諸国が動揺する一方、中国などの新興国が台頭し、より大きな役割を果たしつつある。

サミット閉幕にあたって発表された首脳宣言では、米国を除く19カ国・地域の首脳が米国のパリ協定脱退に留意すると表明。パリ協定は「後戻りできない」との見解でも一致した。

米国側は、外国による低炭素化の取り組みを支援する意向を宣言に盛り込んだ。

国際ガバナンス・イノベーションセンター(CIGI)のトーマス・バーンズ氏は「米国抜きでは明確に意見が一致している。しかし、それこそが問題だ。最大の経済を持つ米国抜きでどこまでやっていけるだろうか」と指摘する。

貿易面では「保護主義と闘う」と表明

もう一つの争点だった貿易について、20カ国・地域首脳は首脳宣言で「あらゆる不公正な貿易慣行を含めた保護主義と闘う」と表明。不公正な貿易慣行に対する「正当な対抗措置の役割を認識する」とした。

また、メルケル首相が重視する、アフリカの経済開発プロジェクトで20カ国・地域が協力する方針も確認された。

メルケル首相が今回のサミット開催地に、自身の出生地であり、かつて反体制運動の拠点でもあったハンブルクを選んだのには、平和的な抗議活動を受け入れるドイツの寛容さを世界にアピールする狙いがあったとみられる。

しかし現地では、サミット閉幕までの3日間で、サミット開催に反対する大規模なデモから一部が暴徒化。警官200人以上が負傷、140人以上が逮捕される事態となった。

メルケル首相はサミット閉幕後に警察と治安当局に感謝を示し、暴徒化したデモ参加者を非難したが、閉幕後の会見ではハンブルクを開催地に選んだことを巡り厳しい質問が記者から飛んだ。

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