運転席のダッシュボードに革命が起きている 車部品メーカーに激震

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無駄を省いたダッシュボードは自動車メーカーにとってコスト削減につながる可能性があり、ミュンヘンに本拠を置く経営コンサルタント会社ローランド・バーガーによれば、統合された運転席することで、1台あたり175ドルの節約になるという。

また燃費の改善にもつながる。なぜなら、電子制御ユニット(ECU)と呼ばれる、表面に現れないコンピューターの数を減らすことができれば車両の軽量化につながるからだ。現在、自動車には80─120個のECUが搭載されているが、その数は今後数年で急激に減少すると予想されている。

だが、見栄えのする運転席を導入する最大の動機は、売上げだ。

スマートフォンが提供するシームレスな技術に慣れたドライバーにとって、現在のダッシュボードが提供する機能はゴチャゴチャしており、直感的に分かりにくい。今月発表されたJ・D・パワーによる調査では、新車オーナーからの最も多い苦情は、オーディオ、通信、エンターテインメント、カーナビシステムが原因とされている。

若い世代の消費者は、車に対しても、また運転そのものに対しても、親世代に比べて情熱的ではないと見られているが、運転席の改善は彼らの興味を引く上でも重要と言えるだろう。調査会社ミンテルによれば、ミレニアル世代の自動車購入者の41%は、最新のテクノロジーが搭載されているかに関心を持っていたという。

どの企業が優勢になるかは、まだ不透明

まとまりのないダッシュボードは、「ユーザー体験における最も顕著な違いとなっている。目の前に見えるものだからだ」と英コンサルタント会社SBDオートモティブのアンドリュー・ハート氏は語る。

ハート氏によれば、多くの車種において、ドライバーに衝突の危険性を知らせる音声警告システムがオーディオと連動しておらず、お気に入りの曲に紛れて警告音が聞こえないことがあるという。

「ECUを統合していない場合に生じる、バカバカしい例だ」とハート氏は言う。

業界ウォッチャーは、こうした警告システムなどの安全運転機能も統合すべきシステムの1つだと指摘する。その他にも、後部座席用の娯楽システムや、走行速度などのデータをフロントガラス上部に見やすいように投影する「ヘッドアップディスプレイ」などを挙げている。

米国市場に目を戻せば、ビステオンは、自社のドメインコントローラーについて中国や欧州の自動車メーカーと協議しているという。同社はこの技術によって、デルファイ<DLPH.N>、ロバート・ボッシュ、コンチネンタル<CONG.DE>、デンソー<6902.T>などの競合他社に対し優位に立つことを期待している。

どの企業が優勢になるかは、まだ不透明だが、車載電子機器サプライヤーは、自動車のネットワーク接続が進むにつれて、自身の製品が新たな重要性を持ちつつあると考えている。

5年前のダッシュボードは「成形されたプラスチックに対し、われわれが電子機器を詰め込んでいた」とビステオンのマーケティング部門を率いるヤードン氏は語る。「今は、むしろ経験に基づいたエレクトロニクス構造が基本で、その周囲を成形プラスチックで囲むように変化している」

(翻訳:エァクレーレン)

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