金融庁、新規制で「危ない地銀」をあぶり出し 辣腕の森長官、「再編ムリなら淘汰やむなし」

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その際、注意すべきは「金利リスク量の20%超えにより不足した自己資本を拡充しろ」といった機械的な対応はしないことだ。

金融庁が地域の経営環境やビジネスモデルを踏まえ、個別行ごとに収益性やリスクテイクの状況、自己資本水準などを分析し、地銀との対話を通じて問題や原因を明確化し共有していく。これが新モニタリングの第3段階に該当する。

早期是正措置の前に早めに手を打つ

こうした流れの中で、金融庁は「本当に危ない地銀」をあぶり出していく。

たとえば、ビジネスモデル上の戦略として意図的に高いリスクを取っているがその分収益も上がっている地銀と、単に運用難から結果的にリスクを取ってしまい、収益力は低いという地銀とでは、対応が異なるというわけだ。

後者のように追い込まれている地銀の場合は、金利リスクに依存せずに収益を上げる事業計画を一緒に策定したり、他行との提携を模索したりするという。銀行は資本不足などの経営危機に近づくと、段階に応じて、配当や役員賞与の禁止や自己資本の増強、業務の縮小など早期是正措置が発動されるが、そこに至る手前でさまざまな治療法を試みる早期警戒制度との位置づけだ。

このような早期警戒制度は今後、金利リスク以外の信用リスクや収益性、流動性などに関しても導入されていく見通しだ。

「森長官の考えは『地銀の淘汰、再編はやむなし』。金利リスクやアパートローン、銀行カードローンなどの信用リスクにも目を光らせ、軟着陸を目指している」と金融庁関係者は言う。そのためのレールは敷かれつつある。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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