「MINI」が初のハイブリッド、超人気は続くか 燃費は見劣りするが、ブランド力に自信

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世界の自動車業界はますます電動化へと舵を切っている。ミニの発表の前日、スウェーデンのボルボ・カーは、2019年以降に発売するすべての車種をEV、PHV、マイルドハイブリッド車のいずれかに移行させると発表。ガソリンや軽油を燃やす内燃機関だけで走る車からの決別を表明した。同社のハカン・サミュエルソンCEOは「規制が進む中で、エンジンの開発よりもユーザーの求める電動化の開発を進める選択をした」と説明した。

これを受け、前出のロカ氏は「BMWグループとしても、今後EVがメインになっていくのでは」と語った。2019年、ミニはブランド初となるEVを世界で発売する予定だ。年内にもEV戦略を具体化させるという。

環境規制が欧州メーカーを駆り立てる

欧州メーカーがPHVやEVに熱心な背景には、ボルボのCEOが語ったように、欧州で厳格化される二酸化炭素(CO2)の排出規制がある。2021年までに、1キロ当たりの排出量を95グラム以下に抑えなければならないことが決まっている。今回のミニ・クロスオーバーのPHVは1キロ当たり49グラムであり、PHVは規制の順守に大きな役割を果たしそうだ。

ミニの充電ポート。電動車のシンボルカラーとして黄色を押し出している(記者撮影)

PHVやEVの普及には、インフラの拡充が欠かせない。 「行った先に充電スタンドがあるかわからない」と不安を抱くユーザーも多いという。ローランド・ベルガーの貝瀬氏は、「屋外の充電スポットを拡充することでPHVは伸びるのではないか」と予測する。

全国にある充電スポットは約2万1000基と、約3万1000店あるガソリンスタンドの数を超える日も近そうだ。BMWは約1万4000基の充電スポットを持つ充電システム「チャージナウ」と提携し、1年間充電料金が無料になるサービスを展開する。

ただミニ・クロスオーバーのPHVは日本の急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」に対応していないため、フル充電には約3時間かかる。前出の生野氏によると「ミニのEVについては、チャデモへの対応を日本法人から本社へ要請する可能性もある」という。

EVへの布石となるPHVの普及には、「あと2~3年ほどかかる」(貝瀬氏)というが、クロスオーバーPHVでミニは客を振り向かせることができるのか。宿敵のゴルフは、今夏にもEV「eゴルフ」を日本発売する。電動車をめぐる争いは、ますます激しくなりそうだ。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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