カンロ「金のミルク」30億円商品に育った理由 なぜ低迷している飴市場でヒットしたのか

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「なんとか市場に長くポジションを築くようなヒット商品が作れないか」。ミルクキャンディだけでなく、「中長期で市場に生き残る商品作り」を目指してカンロで応用研究部が強化されたのは、今から10年ほど前のことだ。

「金のミルク」シリーズを開発した佐藤さん。入社以来ミルク系の商品の開発に携わってきた(写真:カンロ)

佐藤さんは、入社以来ミルク系の商品に携わっていたこともあり、数十人いるチームの一員として、「ミルクキャンディの開発」を任されていた。年始の仕事始めの社員あいさつなどでは「目標は生涯で歴史に残るような商品を2つは作ること」などと力んで答え、笑われたこともある佐藤さんだが、それだけモチベーションは高かった。

とはいえ、2社の牙城を崩すのはそう簡単ではなかった。入社前は「味覚糖の『特濃ミルク』のファンで、よく食べていた」という佐藤さんは、「まずはミルクキャンディの市場に残ることが先決」と考え、どちらかというと、キャンディのコーティングなどにこだわったり、形状を変えるなどしつつ、やや高級品のような立ち位置での商品づくりを目指した。

販売後2~3カ月で売り上げが急降下

失敗の代表的商品の一つは2011年に出したミルクキャンディ。フランスのミルク文化も参考にしつつ、ミルクの豊かな風味を出したうえに、バニラ香料も使った商品。「ひと手間かけた」贅沢さを売りに勝負に出た。

結果はどうだったか。発売当初の2~3カ月間は物珍しさも手伝ってコンビニなどでよく売れたものの、その後の急下降ぶりは目を覆うばかりだったという。「『木っ端みじんになった』感じだった。今から考えると、真っ向勝負を避け、『すきま』を狙いに行っていた」(佐藤さん)。

大敗北を味わった佐藤さんは、「完全本格志向」に転ずる。当然、原料には一段とこだわった。同社過去最大の「乳脂肪分14.6%」使用に加え、「プロのパティシエも愛用している厳選生クリーム」を北海道のある場所から調達。人工的でない乳本来の味わいを目指すことにした。

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