黒田総裁もクギを刺した、財政規律の緩み

FRBの出口戦略から見える課題と、日銀への示唆(下)

IMF(国際通貨基金)が7月に発表した米国経済に関する年次審査報告書の中で、FRBが保有証券を売却せずに自然減による資産正常化を狙う場合、それにかかる時間が次のように推計されていた。

QE3が2014年6月まで継続される場合、FRBの国債保有額が歴史的正常水準(現金流通額)に戻るのに約5年かかる。FRBのMBS保有残高がゼロになるまでには約30年かかる。つまり、長期にわたって市場に超過準備が残ることになる。

正常化が可能なのか、ハト派にもある危機意識

その間、超過準備への付利(IOER)を引き上げつつ、短期資金吸収オペをある程度実施すれば、市場の短期金利を引き上げることはできるだろう。しかし、それは「海図なき領域」であり、市場を混乱せずに適度な引き締め効果を醸し出せるかは、やってみないとわからない面がある。

FRBが保有証券の自然減を狙っている間に、次の景気後退期が必ずやってくるだろう。その際、FRBが短期金利引き下げだけでは対処しきれず、新たな資産買い入れ策(QE4)を開始することになれば、FRBのポートフォリオは再び膨張を始める。そうなると、「正常化が実現される時期はいったいいつになるのか?」という不安が、市場で台頭してくるおそれがある。

FRBは、異例の緩和策を行ううえで「コスト-ベネフィット・テスト」を通過したものを採用してきた、と説明している。その政策のコストやリスクと便益を比較考慮して、便益が上回る場合はそれを採用するというスタンスである。

現在のタカ派メンバーは、QE3は目先の景気刺激効果よりも出口政策の困難化という弊害の方が大きいと判断しているがゆえに、早々に停止する必要があると考えている(前述のようにそういった見方のメンバーは6月時点でFOMC内に約半数もいた)。

それに対してバーナンキ、イエレンを含むハト派は、そうは言っても足元の景気が失速してはまずいので、経済指標を見極めながら慎重に進めていこうというスタンスである。しかし、どこかで止めなければ危険だ、という意識は彼らにもある。代表的なハト派メンバーであるエバンス・シカゴ連銀総裁が、最近、9月の資産買い入れ縮小決定の可能性を「排除しない」と述べたのは、その表れと言える。

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