「大惨事」もありえる米議会のヤバすぎる状況 大事な夏休みも短縮する勢い

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民主党との調整を考え、「小さな政府」の度合いを弱めようものなら、すぐに党内の保守派は離反する。共和党としては、まずは党内の意見統一が先決であり、民主党への対応は二の次となっている。

なお、債務上限の引き上げに関しては、議会の特別な規則を利用すれば、共和党の賛成だけで実現することも不可能ではない。しかし、そこまで対決的な路線を選べば、これまで以上に民主党との関係は悪化する。もう一方の課題である歳出法案の審議において、民主党の協力を取り付けるのは難しくなりかねない。共和党としては、慎重な戦略が必要だ。

見た目よりも事態は切迫している

秋の締め切りといえば、まだ十分に時間があるように感じるかもしれない。しかし、見た目よりも事態は切迫している。これから秋にかけて、議会が開会している日数は決して多くない。議員が一部返上を提案した夏季休会はもちろんだが、秋にはユダヤ教の祝日に関連した休会も予定されている。予算編成の締め切りとなる9月末までを展望すると、上院の開会予定日数は32日、下院は25日しか残されていない。

「Slow Motion Train Wreck(ゆっくりと進行する大惨事)」という言い回しがある。ゆっくりと列車が衝突に向かっていくように、誰の眼にも大惨事に向かっているのは明白であるにもかかわらず、なすすべがない状況を指す言葉である。

大渋滞に陥りつつある米国議会は、衆人環視の中で、ゆっくりと大惨事に向かおうとしているのかもしれない。

安井 明彦 みずほリサーチ&テクノロジーズ 調査部長

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やすい あきひこ / Akihiko Yasui

1991年富士総合研究所(現みずほ総合研究所)入社、在米日本大使館専門調査員、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長、同政策調査部長等を経て、現職。政策・政治を中心に、一貫してアメリカを担当。著書に『アメリカ 選択肢なき選択』(日本経済新聞出版社)などがある。

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