人間が過去の記憶を都合悪く解釈しない理由

記憶力に自信がない?水分足りていますか?

「あれでよかったよね」。今の自分を正当化するために過去の記憶を歪めてしまうことがあります(写真:xiangtao / PIXTA)
手軽に記憶力を高める方法があればなぁ──そんなふうに考える人は多いだろうか。最新科学でわかった脳の不思議なクセ、そして記憶力アップのヒントを、『できない脳ほど自信過剰 パテカトルの万脳薬』の著者で、脳研究者の池谷裕二さんが解説する。

体の水分不足で記憶力が下がる

真夏になると話題に上るのが熱中症です。

熱中症に至る危険因子の1つは脱水症です。水分は体重の60~70%を占めます。その3%が失われただけで、頭痛や嘔吐や食欲低下などの症状が生じます。それほど水分は体にとって大切だということになります。

近年、水分は健康のみならず、記憶力や学習能力にも影響することが明らかになってきました。たとえば、コネティカット大学のアームストロング博士らが2011年に発表した論文によれば、水分の損失が、たとえ体重の1%以下であっても、記憶力の低下や認知エラーが起こるといいます。1%の水分損失は、頭痛はもちろん、のどの渇きすら感じない量です。この程度の脱水は、夏季だけでなく、一年中起こりうるレベルです。

イーストロンドン大学のエドモンズ博士らが、水分補給と脳機能の関係を詳しく調べています。たとえば、小学校低学年の生徒58人を対象に、物語を読んで聞かせるテストを行っています。物語の内容を4択問題で思い出してもらったところ、平均点は2.8点でした。ところが、20分前に約250mlの水を飲んだ生徒では点数が約10%も上昇しました。特に難しい問題の正答率が高まっているのが興味深いところです。

ちなみに、この試験は春季3月に行われたものですから、夏季特有のひどい脱水症状とは無関係です。おそらく生徒たちは、日常的に水分が不足している状態にあるため、わずかに水分を補給するだけで、認知能力が回復するのでしょう。では大人の場合はどうでしょう。

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