OPEC減産延長でも原油価格が上がらない理由 先行き50ドル台を超えて上がる可能性は?

拡大
縮小

しかし、「2014年以降は、市場の関心が需要側から供給側に移った」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構〈JOGMEC〉の野神隆之・主席エコノミスト)。

大きな要因はシェール革命だ。OPECに加盟していない米国で、頁岩(シェール)からの原油採掘ができるようになり、それまで1日当たり700万バレル弱だった同国の原油生産量が、シェールオイルの生産が本格化した2009年以降、右肩上がりに拡大。2014年にはサウジアラビアを追い抜き、1172万バレルと世界最大の原油産出国になった。世界全体の原油生産量も10年間で約1000万バレル増えた。

かつては原油の価格が下がると、OPECを中心とする産油国は原油を高く売れないので、生産量を減らしてでも価格を維持しようとしていた。しかし、2014年からの価格下落局面ではOPECの盟主であるサウジアラビアがシェール潰しのため、あえて減産をしない持久戦を続けていた。だが、2016年11月にようやくOPEC諸国が減産に合意。今年5月には減産を9カ月間延長すると決めた。

価格が上がれば稼働するリグが増える

一時は50ドル半ばまで持ち直した原油価格だが、直近では再び40ドル台前半に下落している。これはなぜだろうか。

大きな要因はやはり需給だ。供給面では、OPECに加盟していない米国の影響が大きい。2014年に原油価格が急落したとき、生産コストが高くなりすぎて掘削装置(リグ)を停止した米国のシェールオイル採掘業者は、2016年の価格持ち直しを受けて急速にリグを再稼働、生産を急激に回復させている。

2014年10月に1609基だったリグ数は、2016年5月に316基まで落ち込んだが、直近(2017年6月30日)では再び756基に増えている(米石油サービス大手・ベーカー・ヒューズ調べ)。シェールオイルの損益分岐点はかつて1バレル=60~70ドルとされたが、現在では技術が進歩し、同40~60ドルでも採算が取れるとされる。

掘削コストが低いところでは、足元の原油相場でも収益が得られるのだ。さらに経済成長重視のトランプ政権は、オバマ前政権の下で行われてきたシェールオイル掘削における環境規制を、再び緩和する方針を示している。

一部のOPEC加盟国の動きにも注意が必要だ。紛争などにより原油生産量が減少していたリビアとナイジェリアは今回の減産合意から除外されていて、急ピッチで生産を再開しており、今後の原油相場の攪乱要因となる可能性が市場で懸念されている。

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