ソニー渾身「スマートウォッチ」の真価と課題 wenaの新製品は革バンドに「Felica」を格納

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新製品は「wena wrist Leather」。バッテリー不要のカード型FeliCaに採用されている技術を基礎に、それを柔軟性のある革バンドの中に収めることにより、電子マネー機能を手持ちの時計(18、20、22ミリの3つの幅から選べる)で実現する。革バンドの中に収めることが可能な新しいFeliCaチップも新規開発した。価格はいずれも8380円(税別)。12月下旬発売の予定で開発の追い込みが行われている。

同時に、従来は腕時計本体とセットでのみ販売してきたwena wristのステンレスバンドも22ミリ幅のみの展開ではあるが、シルバーモデル3万3880円、ブラックモデル3万6880円で7月11日から販売する。

これによって、wenaが目指してきた「趣味としての腕時計にスマートバンドを組み合わせることで新しい価値を提供する」というコンセプトが、一歩、理想に近づいたと言えよう。

誤解のないよう改めて言うが、wena wrist Leatherは技術的にはカード型FeliCaの派生とも言える商品だ。バッテリー不要で電子マネーに特化して、チャージと支払いを行う機能しかない。また現時点では楽天Edyのみが対応電子マネーサービスとして名を連ねる。

ステンレスバンドはさまざまな制約から、交通系電子マネー(具体的にはSuicaやPASMOなど)に現時点で対応できていない。今回の製品も同じか?と感じている方もいるだろうが、実は今回のほうが交通系電子マネーに対応できる可能性はある。

新開発のFeliCaチップは複数種類のサービスに同時に対応できるよう設計されている。チャージしながら使うのであれば、仕組みとしてはカード型SuicaやPASMOとまったく同じでよく、トレイの上に置いてチャージする新型のチャージ端末が普及すれば、wena wristの提案する利用シナリオを多くの人が活用できるようになる。

楽天Edy以外への対応は?

ソニー新規事業創出部wena事業室統括課長の對馬哲平氏(筆者撮影)

具体的には楽天Edy以外のFeliCaサービス提供者と、どこまで話をしているかについて、對馬氏は「それはまだ言えません。しかし、カードを挿入しなくても良い電子マネーチャージ端末が普及しているサービスならば、基本的には対応していける」と話す。

また、wena以外に視点を広げてみると、フレキシブルなバンドにも活用できる信頼性の高いFeliCaが実現できれば、それを応用して複合商業施設向けの決済が行える電子チケット、リストバンドなどへの応用の可能性も広がってくるだろう。

B2Bへの広がりが出てくれば、将来的には生産量の増加からコストを大幅に圧縮できる。そうなってくれば、エンドユーザー向けだけにwena wristを展開するのではなく、時計メーカーなどに技術供与する道も開けてくる。

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