インサイダー取引「海外居住者」でもアウト! 課徴金は過去最大額に迫る1857万円だった

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証券取引等監視委員会は海外当局と連携し、外国人のインサイダー取引にも厳正に対処する姿勢を示した(撮影:尾形文繁)

日本の証券市場でインサイダー取引をしたら、海外居住者だろうが外国人だろうが、当然のように課徴金を課す――。6月30日、証券取引等監視委員会はイスラエル在住の欧米人男性に対して、1857万円の課徴金を課すよう、金融庁に勧告した。

インサイダー取引での個人への課徴金としては、IT関連企業「いい生活」の元社員への課徴金2079万円に次ぐ高額だ。監視委員会によれば、国際取引等調査室のインサイダー案件としては過去最高額だという。

この男性は、パチンコやモバイル関連ビジネスを手掛けるサン電子が、携帯電話販売業界向けサービスを展開する「セレブライト・モバイル・シンクロナイゼーション社(本社イスラエル)」を買収した2007年頃から、サン電子とコンサルティング契約を締結。海外M&Aの指南役を務めてきた。

セレブライト社はサン電子の売上高の過半を占める重要な子会社だ。また、技術力の高さにも定評がある。以前、米司法省や米連邦捜査局(FBI)はiPhoneのロック解除を要請し、アップルと対立していたが、セレブライトはこの方法をFBIに提案。ロック機能を解除できたとされている。

下方修正の公表前に売りまくる

男性がいつからサン電子株を保有していたかは不明だが、サン電子株を買ってすぐインサイダー取引をしたということではないようだ。また、少なくとも3.4万株以上のサン電子株を保有していたという。

パチンコ向けの基板やホール管理システムが主体だったサン電子は当時、国内のパチンコ人口の落ち込みを受けて、事業の多角化を模索していた。その時にめぐりあったのがセレブライト社だった。

「セレブライトの業績不振で、サン電子は2016年3月期の業績予想を下方修正する」。男性はサン電子から関係者に送られたメールでそのことを知ると、公表前の2015年9月30日と10月1日に、3.4万株を合計4190万円で売った。平均売却単価は1株1232円だった。

サン電子の2016年3月期の期初計画は売上高275億円(前期比0.6%増)、営業利益27億円(同18.2%増)。それを売上高240億円(同12.2%減)、営業利益6億円(同73.7%減)とする大幅な下方修正だった。

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