iPhoneが「世界のすべて」を変えられたワケ 10年前は「電話できるiPod」と認識されたが…

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アップルは2007年1月にサンフランシスコで開催されたMacworld Expoの基調講演で、当時のCEO(最高経営責任者)、スティーブ・ジョブズ氏がiPhoneを発表した。このステージは後に、「驚異のプレゼン」としても有名になり、またアップルという企業が世界で最も価値のある会社になるきっかけとなった瞬間でもあった。

ジョブズ氏がiPhoneを紹介する際、3つの革新的な製品を発表すると切り出した。「タッチ操作が可能なワイドスクリーンのiPod」「携帯電話」「インターネットコミュニケーションデバイス」の3つだった。

その基調講演はYouTubeなどでも振り返ることができ、聴衆の反応とともに楽しめるが、そこで面白い比較をすることができる。ジョブズ氏が「iPod」「電話」と2つの機能を話すと、聴衆は尻上がりに興奮していった。しかし最後の「インターネットコミュニケーションデバイス」については、ピンと来ていなかった。

つまり、新型iPodと、アップルが電話をリリースすることには大いに沸いた。そして、これらが別々のデバイスではないとわかり、熱狂に包まれたのだ。

この反応については、すでにケータイに高度な通信機能やアプリ機能などが組み込まれ、それを長らく使ってきた日本人からすれば、いまいち納得ができないものだった。ケータイ世代の筆者としても、まあ確かに通話はするけど、メインはケータイメールだし、ケータイサイトだったでしょう?とiPhone登場の5年前から考えていたくらいだ。

ただ、iPodと電話が融合したというiPhoneに熱狂する理由もよくわかった。米国で暮らしていると、コミュニケーションやサービスを利用するうえで、電話番号を使った通話やText(SMS)の重要性が日本よりも高いからだ。

一番理解されなかった機能が、世界を作った

インターネットコミュニケーションデバイスについては、すぐに理解が追いついていなかったように見受けられた。発表当時、未知のiPhoneに対しては、携帯電話とiPodが融合したことが価値だ、と感じられていたのだ。

もちろん現在のiPhoneの活用を見てみれば、インターネットをアプリから利用する方法が一般的になり、スマートフォンは、多くの人々にとって「第一のネット接続デバイス」になっている。

世界規模で見ると、2014年の段階で、モバイルでのアクセス人口がデスクトップを上回っており、米国ではモバイルがネットアクセスの第一のツールとなっている人が71%にも上る。新興国のインドネシアに至っては91%がモバイルを第一のツールとしてネットを利用している(Smart Insights調べ)。

2007年1月の段階で、さほど大きな反応が得られなかった「インターネットコミュニケーションデバイス」という要素が、今日の世界を作る最も重要な機能であった。そんな振り返りをすることができる。

前述のiPhone発表のステージで、今日のiPhoneを読み解くうえで重要なキーワードがいくつかある。それは「新しい革新的な製品は、革新的なユーザーインターフェースが実現する」「デスクトップクラス」と「ソフトウエアにこだわるなら、ハードウエアを作るべき」というものだ。

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