自民党大敗、外国人は日本株を売って来るか 米国株の「暴落サイン」は依然点灯したまま

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確かに3日の日本株については、軟調な展開になるかもしれない。だが、この選挙結果をきっかけに大きくトレンドが変化し、日経平均株価やTOPIX(東証1部株価指数)が下げ幅を拡大するような展開は、筆者はいまのところ考えていない。また、為替市場でもこの動きは変わらないと見ている。

「ヒンデンブルグ・オーメン」は点灯したまま

むしろ、目先は東京都議会選挙の結果云々よりも、米国経済と米国株の動向に注目したほうがよさそうだ。

1カ月ほど前に寄稿した際、米国株市場で「ヒンデンブルグ・オーメン」
(株価暴落の前兆とされるシグナル。詳しくは前回の拙稿「日経平均2万円でもNYダウに不吉なサイン」を参照)が点灯していると指摘した。この売りサインは現在も有効で、米国株の下落を引き続き示唆している。おさらいとなるが、最後に売りサインが点灯したのは2015年6月のこと。その後、NYダウは2015年夏に中国株下落の影響を受けて急落した。売りサインが点灯して約2カ月で約15%(3000ドル)ほどの下落となった。

また、「恐怖指数」として有名な米VIX指数は史上最低の水準で推移しており、史上最低の水準にあるからこそ指数の急騰に伴う米国株の混乱を警戒する市場関係者も多い。NYダウとナスダック指数が高安まちまちで方向感に乏しくなっていることを踏まえ、米国株に対する懸念は足元増加している。

この米国市場では、今週重要な経済指標が相次いで発表される。まずは5日のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録の公表だ。6月のFOMCでは賛成多数で政策金利が引き上げられたほか、中期的なインフレ目標の達成には楽観的な見通しを示し、残り年1回の追加利上げ見通しを維持した。しかし、足元の物価上昇ペースが減速しているなかで、今後の政策についてどのような議論が行われたのか注目が集まりそうだ。また、年内に着手するとした段階的なバランスシート縮小に関する具体的なスケジュールについても、何らかの手がかりを得られるかが焦点となる。

経済指標についても、3日に6月ISM製造業景況指数、5月建設支出、5日に5月製造業・耐久財受注、6日に5月貿易収支、6月ISM非製造業景況指数、6月ADP雇用統計、そして、7日に6月雇用統計発表が控える。先週発表された1-3月期GDP確定値は上方修正されたものの、今週の各種指標で引き続き景気改善を確認できるかが焦点となるだろう。

雇用統計では、失業率は前月比ほぼ横ばいの4.3%、非農業部門雇用者数は前月比17万9000人増が予想されている。好調な雇用情勢が確認できれば、9月利上げへの機運が高まるが、明確な方向性を示すだけの内容が出るかどうか。

もっとも「日本株市場への影響は限定的」という見方が崩れる可能性があることには留意が必要だ。つまり、都民ファーストの会が早い段階で国政政党への要件(国会議員5人以上)を満たすために動けば話は別だ。自民党を離党した若狭勝氏、日本維新の会を除名された渡辺喜美氏などの動きが取りざたされているが、もし、そうなった場合は、次期衆議院選挙において、今回の選挙結果が全国に波及するか見極める必要がでてくる。その場合は、波乱になる可能性も出てきそうだ。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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