「人喰い」に魅せられた男の七転び八起き人生 神保町の「異色」古書店はこうして生まれた

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「マニタ書房」の主、とみさわ昭仁さん、56歳である。この場所は、古本屋であると同時に、とみさわさんの事務所でもある。とみさわさんはフリーライターを生業にしているので、店内で原稿を書いている。

とみさわさんが、取材に出るときは、お店は閉めてしまう。不定期営業なので、事前に調べてから足を運ばなければならない。このように「マニタ書房」はなんとも不思議な古書店なのである。

なぜこんな古書店ができることになったのか、主にお話を伺った。

古本にハマったきっかけ

とみさわさんが古本にハマったのは中学時代だった。以来、神保町はもちろん、渋谷、中野、吉祥寺……と東京中の古本屋に足しげく通った。中学校の時分から、漠然と古本屋になりたい、という夢はあったという。

「ただ、その夢は卒業したらすぐに古本屋に就職しよう!!とか、そういう夢ではないですね。定年の後に古本屋になったら楽しいだろうな~という、つまり老後の夢ですね」

老後の夢はひとまず置いておいて、中学時代のとみさわ少年は、漫画家になりたいと思った。勉強は苦手だったが、お絵かきだけは得意な子どもで、ヒマさえあれば漫画ばかり描いていた。

「『史上最年少で手塚賞を取って、華々しくデビューしよう!!』なんて大きすぎる夢をいだきました」

夢を描いたとみさわ少年は15歳だったが、ちょうどその頃、小池桂一氏が史上最年少16歳で手塚賞に入選し、鮮烈なデビューを飾ってしまった。最年少を目指すなら、1年以内に手塚賞を取らなければならなくなったが、それは実力的に無理だなと思った。

「僕は何事でも『日本一にならなきゃ意味がない』が心情で、仕事でもコレクションでも、無理だなと思ったらすぐにやめてしまいます。今思えば、僕の“やめ癖”は、中学のときにすでに発動していたんですね」

漫画家は諦めたが、絵では食っていきたかった。中学卒業後は、都立の工業高校に進学して、機械製図を習った。

「デッサン力はいらなくて、とにかく寸法どおりに書けば、キチンと出来上がる、というのがとても性に合いました」

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