野球「独立リーグ」今後も続くには何が必要か 四国などで地元密着を確立したが課題も多い

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筆者は今回、鍵山誠と村山哲二という、四国アイランドリーグとBCリーグそれぞれの実質的なファウンダーにじっくりと話を聞いた。鍵山は現在、四国アイランドリーグの運営から離れ、BCリーグとの合同機構である「日本独立リーグ野球機構」の会長を務めている。2人とも、この独立リーグという「もう一つのプロ野球」の世界で10年以上の風雪をくぐり抜けてきた。

鍵山は「各球団には、いろいろな課題はあるが、リーグを維持していく体力と経験は身についている」と語る。村山も「独立リーグのビジネスモデルはできている。だから他県から新球団設立のオファーが来る」と語る。

しかしながら鍵山は「このままいつまで続けていくのか」と言いよどむ。少子高齢化が進む四国では、前向きの展望が描きにくい。村山も、BCリーグの次なる展開については、明確な言葉がなかった。

経営体質は強化してきたし、環境が厳しくなっても、今後も運営していく自信はある。しかし、いつまでこのままの状態で事業を継続すればいいのか、という迷いが言葉の端々から感じられたのだ。

ここで、米メジャーリーグ(MLB)とその傘下チームの関係がどうなっているかを見てみよう。MLBは傘下に「AAA(トリプルA)」を筆頭に、一番クラスが下の「ルーキーリーグ」まで、大きく分けて5階層からなるマイナーチームを抱えているが、直営は下位の1、2チームだけだ。あとは、独立採算の地域球団に選手や指導者を派遣している。マイナーチームは人件費などの負担をメジャー球団に依存しながら独自で興行を行っているのだ。

独立リーグとNPBの関係をどう考えるか

筆者は、日本の独立リーグも、こういう形に移行した方が良いと考えている。そろそろNPBともっと関係を強化すべき時期が来ているのではないだろうか。

NPBでは、すでに巨人とソフトバンクが3軍まで設けている。チームの強化のためにはファーム(下部チーム)で若手などにしっかりと経験を積ませることが不可欠だが、独立リーグに選手を派遣する形なら、コストもそれほどかからず、選手育成ができるはずだ。もちろん、独立リーグにとっても、選手、指導者の年俸は派遣元のチームが負担するから、悪くない話だ。

独立リーグは今や「どこの馬の骨ともわからない」存在ではない。すでに10年以上の実績がある。すべての球団の監督はNPB出身者であり、実力ではソフトバンクや巨人の3軍を交流戦で破るようになっている。しかも選手の年俸は1人、100万~200万円。1球団の運営費は1億円~1.5億円、このうち指導者、選手の年俸総額は5000万円内外とされるから、外国人選手を1人獲得するおカネで、1チーム分が十分にまかなえるのだ。

実際、今の独立リーグは、NPBのマイナーリーグと化していると言っていいだろう。毎年、NPBの球団が年俸を負担して独立リーグに選手を派遣している。また四国とBCの両リーグの監督、コーチは40数人いるが、実質的にNPBを引退した選手の「ポスト」になっている。NPB球団が年俸を肩代わりしてコーチを派遣しているケースもある。フロントに引退した野球選手を迎え入れている球団もある。

ある意味で、すでに独立リーグはNPBにとって重要なパートナーになっているのだ。

あるNPB球団の部長は「本来、NPBがやるべき地域の野球普及活動や選手育成を、独立リーグにやってもらっているのが実情だ」と語る。現場はすでにそうした認識に傾きつつある。

鍵山、村山が設立した「日本独立リーグ野球機構」は、毎年、NPBに関係強化を働きかけている。賛同する関係者も多いが、それでも各球団の足並みが乱れて「決められない」のが現状だ。

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