収益不動産を活用する独創的な「戦略」 ユニークな資本政策と株主重視の経営方針
個人富裕層向けの不動産投資・経営にかかわるサービスを手掛けるエー・ディー・ワークス(ADW)は、2007年ジャスダック証券取引所(現東証JASDAQスタンダード)に上場。15年に東証一部上場を果たし、今年株式公開から10年を迎える。
その成長の原動力は、独創性の高いビジネスモデルにある。同社が仕入れるのは、平均10数戸の都心賃貸マンション。
ハード面やソフト面などさまざまな要因で本来の価値を発揮し切れていない物件を、培った目利き力で見つけ出し、棟単位で購入する。収集する多くの売り情報から徹底的に厳選され、仕入れに至る率はわずか百分の一だ。
さらに、一般的な不動産会社なら在庫を滞留させないように素早く売るのが基本だが、同社は仕入れた不動産を一時保有するのが大きな特徴だ。リノベーションを行い、適切なマネジメントで高い稼働状態を保ちながら賃貸収入を獲得し、適切な時期に個人富裕層に売却するのである。
長期保有により、ADWは収益の安定化が図れるのはもとより、不動産を購入した個人富裕層も賃貸経営が安定した段階で購入できるメリットがある。その後もオーナーから不動産管理、修繕等を請け負って収益力を維持。オーナーのみの会員組織「Royaltorch(ロイヤルトーチ)」を通じて、オーナーの不動産経営を専属のコンサルタントがトータルにサポートする体制も整える。
既存株主に配慮した増資手法を採用
このビジネスのカギは、収益を生み出す不動産をより多く仕入れることにある。収益不動産を求める個人富裕層の多様なニーズに応えることが可能になるからだ。収益不動産取得資金は、その多くを借入金でまかなうが、一定の自己資本も必要で、事業規模の拡大には増資が欠かせない。