イタリア、銀行の不良債権処理はこれから 不良債権3350億ドル、地銀2行清算で終わらず

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 6月27日、イタリア政府は経営難の地銀2行、ベネト・バンカとバンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァの清算手続きを開始したが、同国の銀行業界は依然、景気後退期に積み上がった3000億ユーロの不良債権を抱えており、その処理に取り掛かるのはこれからだ。写真は、バンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァの看板。ローマで3月撮影(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

[ミラノ 27日 ロイター] - イタリア政府は経営難の地銀2行、ベネト・バンカとバンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァの清算手続きを開始したが、同国の銀行業界は依然、景気後退期に積み上がった3000億ユーロ(3350億ドル)の不良債権を抱えており、その処理に取り掛かるのはこれからだ。

最近は景気回復に伴い、新規の不良債権は金融危機前の水準まで減った。しかしコンサルタント会社EYのカティア・マリオッティ氏によると、会計規則が変わっているのに加え、欧州中央銀行(ECB)が来年、小規模な協同組合銀行の資産査定を行うため、貸し倒れ損失が改めて増える恐れがある。

イタリア銀行(中央銀行)によると、同国の銀行不良債権の売却は2015─16年に合計150億ユーロにとどまった。

処分売り

今後売却を控えている不良債権は700億ユーロに上る。清算される地銀2行の分に加え、ECBがモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)に不良債権処理を迫っており、3行だけで450億ユーロ分を売却することになる。処理に伴う損失の大半は納税者が負担する。

一方、最大手のウニクレディト<CRDI.MI>は不良債権180億ユーロの売却を計画中。同行はバランスシートの毀損をカバーするため、既に新規資金を調達済みだ。

しかしイタリア中銀は健全行に対し、不良債権を売却しないよう公然と指導している。安売りすれば一部の専門的な買い手を利するだけで、銀行の資本を痛めるリスクがあるからだ。

これに対してECBは、銀行が春に提出した不良債権処理案への考えをまだ示していないが、イタリア中銀とは異なる姿勢を取るかもしれない。

あるイタリアの銀行筋は「当行の目標設定が十分に野心的だと認められるかどうか、まだわからない。ECBからの返答を聞くのが、審判の日になる。ECBが厳しい姿勢を示せば、イタリア中銀が戒めているような大規模な売却も避け難くなるだろう」と打ち明けた。

関係筋によると、イタリアの大手13行に直接的な監督権限を持つECBは現在、銀行が提出した膨大なデータを精査し、見通しが現実的かどうかを見極めようとしている。

増資の必要性

各行は現在、不良債権の回収率を上げるため、回収専門会社と合弁事業を立ち上げたり、外部から専門家を雇ったりと、不良債権処理に取り組んでいる。

しかし銀行監督について欧州議会に助言する学者、アンドレア・レスティ氏は「(不良債権を)売らなければ削減目標の達成は難しいだろうし、ECBが圧力をかけてくるだろう」と語る。

銀行は不良債権を額面の40%弱と評価しており、イタリア中銀は2006─15年の回収率43%と整合的な数字だと見ている。ところが市場での平均価格は額面の20%前後で、市場で売れば損失が出るのは確実だ。

ロイターの計算では、イタリアの銀行全体の不良債権比率を、ウニクレディトが2019年の目標とする8.4%に抑えるには、業界全体で190億ユーロ程度の資本増強が必要になる。

アリックスパートナーズのマネジングディレクター、クラウディオ・スカルドビ氏は「何年もマヒ状態だった市場も雪解けを迎えている。しかし少なくとも中期的には、銀行が不良債権を取り除こうと思えばある程度の増資が必要になるだろう」と語った。

(Valentina Za記者)

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