東芝総会、株主に広がる「疲れ」と「あきらめ」 原子力の前責任者は最後まで語らなかった

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5月、2016年度決算発表の延期を公表する綱川社長(撮影:尾形文繁)

債務超過解消の切り札として、東芝が進めている半導体メモリ事業子会社、東芝メモリの売却に対する株主の関心は高い。製造合弁のパートナーである米ウエスタンデジタル(WD)が東芝メモリの売却に反対し、訴訟になっていることを心配する質問も出た。半導体統括の成毛康雄副社長は「合弁のパートナーなので歩み寄るところは歩み寄り、係争はきちんとやる。早い解決を目指したい」と答えた。

総会後にWDを提訴

しかし、総会から1時間もしないうちに東芝は、「ウエスタンデジタル社に対する訴訟提起について」というプレスリリースを発表した。WDが東芝メモリの売却を妨害しているとして、そうした行為の差止めと総額1200億円の損害賠償請求訴訟を申し立てたことのアナウンスだった。

総会でも、WDが不当に売却を妨害しているという説明はあったが、訴訟の話までは出ていない。株主への丁寧な説明ができていたとは思えない。

東芝メモリについては、こんなやりとりもあった。

6月21日に日本の政府系ファンド、産業革新機構と米投資ファンドのベインキャピタル、政策投資銀行を東芝メモリ売却の優先交渉先に決めている。ここに韓国のメモリメーカーであるSKハイニックスが融資で参加するスキームだ。

東芝は技術流出を防ぐことを売却条件の一つとして打ち出してきたため、ハイニックスに対する技術流出懸念を問う質問があった。これに対し、成毛副社長は「ハイニックスは、ベインが作る特定目的会社への融資で参加する。東芝メモリの経営には参加しないし、議決権を持たない」と説明した。また、別の質問者に対する回答の中で、「結局、最終的にはなにがしかの利率(※初出時「技術」を「利率」に訂正します。6月29日21:00)に相当するものを(ハイニックスが)取れるように交渉中」と述べた。

19人目の質問だった。

「このように(経営危機)なったのはほぼすべて原発のせい。米国の原発事業を中心にやってきた志賀さんの説明がないのはなぜか。当事者だった方の説明を聞きたい。綱川社長は志賀さんに対してどうしていくのか。それと志賀さんの見解を聞きたい」

この男性株主が名指ししたのは、取締役、代表評執行役会長だった志賀重範氏のことだ。志賀氏は、WHによる原子力サービス会社、CB&Iストーン&ウェブスター社(S&W)買収時の原子力事業の責任者であり、この買収が巨額損失を生んだ責任を取り、2月に取締役と代表執行役会長を辞任していた(本総会後に執行役も退任)。

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